【第46話:旅は道連れ…その2】

 8匹のオーガを倒したオレ達は被害を出さずに倒せてホッとしていたのだが、他の人たちはそれどころではなく、ちょっとした騒ぎになっていた。


 騎士たちは騒然としており、


「オ、オーガだぞ…。8匹だぞ…」

「何と言う力だ…。シルバーランクどころの実力ではないではないか!?」

「いくら加護を授かっている者とはいえ何者なのだ…」

「ほとんどあの少年と小さな従魔だけで…」


 と、少し放心状態のものまでいる始末だった。


 そして助けた女性は、


「いったい何もんなのよ…噂に聞くプラチナランクの冒険者なの?」


 と呆れるように呟いていたが、


「っと、そうだ。その前にちゃんとお礼を言わないとだね!ありがとう!私は森の民メアリよ」


 とお礼と自己紹介をしてきたのだった。

 ~


(森の民?って事はエルフなのか?)

「想像通りよ。私は人間ではなくてエルフよ」


 えっへん!と、何故か威張り気味に告げてくる…。

 オレは初めて見るエルフに少し驚くが、小説やアニメでのエルフの特徴である長い耳などを持たないこの世界のエルフは、見た目はただの美しい女性でしかなかった。

 身長は160cmほどで、少し細身だが革鎧の上からもわかる抜群のプロポーション。

 腰まで伸びる金色の髪に、薄い緑の瞳をしていた。


(よく考えたらリリルもハーフエルフなんだよな…)


 と、ちょっと今更ながらに関心してしまう。


「そうなんですね。見た目普通の女性なんで森の民って言われなければわかりませんでした」


 と、正直に思ったことを伝える。

 するとメアリは、


「見た目普通の女性……見た目凄く可愛くて綺麗な女性の間違いじゃない?」


 と、突っ込んでくる。

 中々面倒くさい性格のエルフのようだ…。


「あぁ!今ちょっとめんどくさい奴とか思ったでしょ!?」


 そしてかなり勘が鋭いようだった…。

 ~

 とりあえず誤解だと何とか誤魔化して話を続けると、どうもメアリは森を出てまだ間もないようだった。

 そこをたまたまオーガを見つけて腕試しに挑んだのだが、1匹ではなく集団だったので慌てて逃げだしたとか…。

 ちなみにエルフなので見た目で判断できないと思い年齢を聞くと、烈火のごとく怒られたのは内緒だ…。

 そうしてメアリと話していると、他の人たちも追いついてきて話に加わる。


「君たちは本当に凄い冒険者だったんだね。私達ももっと頑張らなければと良い勉強になったよ」


 と、騎士隊長のメンフィスが話しかけてくる。

 そしてオレ達を一番疑っていた若い騎士のセグも


「さっきはすまなかった。君たちの実力も見抜けないとは自分を恥じるよ」


 許してくれと謝ってきたのだった。

 ~

 先ほどユリ・コルムス様と話が中断してしまったのを思い出し、騎士隊長に聞いてみる。


「そういえば先ほどユリ・コルムス様が何か話そうとしていた途中だったかと思いますが、確認しなくて大丈夫ですか?」


 すると騎士隊長のメンフィスも思い出し、


「おぉ!これは失礼しました。すぐにお連れしますので、少しお待ちください」


 と言って、近くまで来ていた馬車まで迎えに行ったのだった。

 ~

 それからすぐに領主の令嬢であるユリ・コルムス様を連れて戻ってきたのだが、なんだか様子がおかしい。

 何がおかしいかと言うと、オレとパズを見る目が明らかにキラキラ光っているのだ…。


「さ、先ほどの戦いを拝見させて頂きましたぁ!す、凄かったです!まるで勇者グルーロの英雄譚のようでもう!」


 と、なんだか物凄く興奮している…。

 先日 最新化アップデートされた知識かくかくしかじかによると、『勇者グルーロの英雄譚』とは300年ほど前の闇の眷属の軍勢を打ち破った勇者グルーロにまつわる物語をまとめた書物で、子供に大人気の話だそうだ。


「そんな大げさなものではないですよ。噂に聞くプラチナランクの冒険者の方はもっと凄いらしいですしね」


 と、謙遜しておく。

 本当はリリルに並ぶ美少女に、キラキラした目で見つめられてドギマギしていたが、ちょっとカッコつけてしまった。


「私はプラチナランクの冒険者の方は存じませんが、王都で見た闘技大会でも戦って勝てるほどの強さです!」


 と言って、まだキラキラした目でみてくる。

 オレは照れくさくなって、パズの方に目線をそらして冷静さを取り戻そうとする。

 しかし、パズはオレのそんな浮ついた気持ちに気付いたようで


「ばぅ!」


 と一吠えして、

 スコンッ!

 と、小さな氷の礫をオレの脳天に落とすのだった。


「痛ってーーやん!?」


 ~

 非常に不本意ながらも冷静さを取り戻したオレは咳ばらいをし、改めてさっき何かオレ達に話をしようとしていなかったかと聞いてみる。


「お見苦しい所をお見せしました…。ところでユリ様、先ほど戦闘前に何か話そうとしていませんでしたか?」


 すると、ユリ様は


「あ!そうでした!実は私の祖母がある病を患っておりまして、出来れば治癒魔法を試してみていただけませんでしょうか?加護を受けた方の魔法は特別だとお聞きします」


 そしてどうかお願いしますと頭をさげられる。

 聞けば何か祖母の力になれないかと、わざわざ王都の学校から休みを取って戻ってきていたらしい。

 オレはリリルとパズに目をやると、二人ともわかっていると頷いたので


「わかりました。どこまで効果を出せるかわかりませんが治癒魔法を試させて頂きます」


 と、頼みをきくことになったのだった。

 ~

 そしてこのまま一緒にコルムスの街に移動することになったのだが、オーガをどうするかと聞かれてオレ達は悩んでしまう。

 オーガは霧の魔物ではなかったのでいくつかの素材が取れるらしいのだが、数日前まで日本人だったオレに人型の魔物を解体するとか無理な話だ。

 リリルやメイにしても人型の魔物の解体は抵抗があるらしく、結局リリルの魔法で焼き払って処理してもらうのだった。


 こうしてユリ・コルムス様一行とコルムスの街に向かう事になったのだが、何故かメアリもついてくる事になり、結局その場にいる全員でコルムスの街に向かうのだった。

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