第23話 土地確保とリョウの秘密
「やあ、マリア。調子はどうだい?」
カウンターに座ってるマリアを見つけると声をかける。
「それなりよ。これで美味しいケーキが食べれたら最高なんだけどね。」
ちょっといたずらっ子な笑みは反則だね。負けた。
「それはそれは。あとでサービスするよ。」
「うん、ありがと。」
「いいよ。その代わり新作だから感想教えてね。ところでローズから聞いたんだけど楽団の件だって?」
「ええ。リースとか他の参加してくれる人とかとも話したんだけど、劇場を借りるとなると王立音楽団とかからの妨害が入りかねないのよ。貴族権限で無理やり利用予定を横取りとかならやりかねないわ。なら自前のを持つしかない。ちょうど商業区の王都中央広場に面した建物のうちの一つが破産した商人の持ち物だったらしく借金してた商業ギルドがオークションにかけるみたいなの。土地も大きいしそのまま使うにしろ建て替えるにしろ十分な大きさよ。」
「それを落札すると?」
「ええ。オークションは商業ギルド主催である以上貴族の手出しはまず無理。そんなことしたらギルドの信頼に関わるもの。妨害するなら普通に落札するしかないわ。つまり必要なのは落札し、それを改装ないし建て替えるのに十分な資金、そしてオークションの参加権。」
「ギルド主催なら僕が参加できるね。資金は?」
「問題はそこなのよ。リースの家の力を借りたら意味がないし。またリョウに頼むのもね。」
「ふーん。最低落札価格は?それとオークション開催日も教えて。」
「白金貨5枚。オークションは五日後。」
「ならなんとでもなるよ。僕が落札するね。」
「で、でも…」
「いいから。その代わり最初の演奏会で一番いい席をお願いするね。」
「……やっぱりダメよ。リョウにばかり負担が行くわ。」
「うーん…なら今度デートしよっか。」
あ、あれ?突然マリアの顔が真っ赤に…。
「ち、ちょちょちょっと!なに言ってるのよ!前愛人扱いされた時の二の舞にしかならないわよ!」
あ、そっか。普通そう考えるよね。
でもおふざけなんだよなぁ…。
それにそんなに必死に拒否しなくても…。
「ごめんごめん。その、買い物に一緒に言ってお金があること、見せようかなって思ったんだ。」
「それならそうと言いなさい!この罰として今回は助けてもらうことにするわ!」
「かしこまりました。して、お客様。せっかく喫茶店にいらしたのです。コーヒーとケーキはいかがですか?」
二人でくすっと笑った。
ーーーーーーーー
ーローズside
「流石だ。この店の紅茶は美味い。公爵家にもここまでの物を淹れられる者はいなかったな。」
「私も驚きました。紅茶とはここまで美味しくなるものなのでしょうか?」
アメーリアが感嘆の声を漏らし、アルティンは驚きを隠せないと言った表情でローズに問う。
「市井で売られている茶葉も一般的な淹れ方ではなくちゃんとした淹れ方をすれば美味しくなりますよ〜。けれどこの紅茶はリョウが本気で育てたものですし、特別です。」
「特別とは?先ほどそこの扉の向こうの茶畑を見せてもらったが特別な要素は見当たらなかったが…。」
「見られたのですね〜。あの茶畑が特別な紅茶の秘密ですよ〜。見ただけではわからないことだらけですけどね〜。」
この茶畑は天気、気温、湿度、日照角度や時間、風などお茶が成長するのに必要な物をそれぞれに最適な分だけ供給するようにできている。その上扉が閉まっていて中に人がいない間は時間の流れが早い。収穫できるようになると中にいるリョウ製作のゴーレムが収穫をして時間停止倉庫に保管される。その後必要な分だけ熟成、発酵させ使用しているのだ。
それをローズが二人に説明する。
最初は興味深そうに聞いていた二人だが、だんだんと顔が強張り、最後には冷や汗が出てきた。
笑顔で話し終えたローズにやっとの思いでアルティンが口を開く。
「り、リョウ殿は一体何者なのですか?私の父である近衛騎士団長すら単独で相手をすることはできないと言わせ、その上このような魔道具を…。」
「それだけではないな。母上の病を治してくれたのもリョウだった。自前で作ったというエリクサー。そんなもの普通は個人で作れるものではないぞ。」
アメーリアもそれに追随するように言う。
「そうですね〜。とりあえず彼は人間ですよ〜。」
「あ、あぁ。それは分かっているつもりだ。」
「私もです。しかし…。」
「じゃあ付いてきてくださいね〜。一つ、お見せしたいものがあります〜。」
そういってローズは一つの扉へ向かう。
それを二人は追う。
ガチャ。
「彼には一つ夢がありました。そのために強く、物作りも超一流になりました。」
そして扉の先にある物を指し、
「あれがその夢を追った証であり、夢破れた跡でもあります。そしてあなた方の質問への答えですね。」
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