第21話 女騎士×2がお店にやってきた。
「お久しぶりですね、姫騎士様。」
「そうだな。しかし何故その名前で呼ぶ?」
学院も夏休みに入り少しした頃、アメーリア様が朝早くに店に来た。騎士団の部下なのかな?1人連れて来た。女の人でなんとなく貴族っぽい感じがするけど、纏ってある雰囲気がそれだけじゃないって告げてる。きっと相当なやり手だろうね。
って、そうじゃないそうじゃない。
なんなのアメーリア様。こんな公の場で平民に貴族を愛称で呼ばそうとしてるよ…。
互いにわかっているので目を合わせて、苦笑する。
「それで、後ろの方は?」
「おっと、これは失礼した。今回、私の副官になったんだ。」
「王都第五騎士団副団長のアルティン=リードと申します。以後、お見知り置きを。」
「これはこれは。私はここの店主をしております、リョウといいます。よろしくお願いしますね。」
ん?第五?
「名前からわかるだろうがリード家令嬢だ。その名に恥じぬだけの力はあるぞ。まだ16だが対人戦のセンスには目を見張るものがある。私だったら剣一つでオーク100匹を相手にした方がマシだと感じるな。」
おっと、無視しちゃダメだ。
「リード家と言えば去年男爵に叙勲されたのでしたか。」
「そうだ。それまで長い間騎士として国に仕えていてな、その中で培われた剣術は厄介だぞ。」
厄介だと言っておきながらアメーリア様は笑顔のままだ。この人ってバトルジャンキーではなかったと思うんだけどな…?
「さて、本日のご用件をお伺いしますね。」
「父上から聞いたのだが、リョウも戦えるそうじゃないか。それに自前の訓練設備があるとか。どうだ、稽古をつけてはくれないか。」
「稽古を、ですか?それはこの第五騎士団と関係があるとみてよろしいので?」
さっき言われた、第五騎士団。
王都には常に五つの騎士団がある。
王都の北側を守る第一騎士団。
南を守る第二騎士団
東は第三騎士団で、西が第四騎士団。
それぞれの方角の門と、その地区の治安維持を担っている。
そしてもう一つの騎士団は近衛騎士団。
王城内とその周辺が管轄だ。
そう、普段は王都第五騎士団なんてものは存在しないのである。
第五騎士団が編成されるのは必要に応じる形で他の王都の騎士団の人数を割いて編成される。
何かない限りは編成されないものが編成されているということは面倒ごとの予感しかしない。
まあ、聞けばわかるんだろうけど。
「そうだ。北の大霊峰から魔物が降りてきたのか、王都からみて北の街、ノスキャビンの北側の街道でかなりの被害が上がっている。王都以外には戦力に余裕があるところはないからな。第五騎士団を編成し、対処をすると言ったところだ。」
「なるほど、それで稽古と何の関係が?」
「今回の第五騎士団には新米も幾分か含まれてる。訓練こそしてあるが実戦はほぼない。だから出発の日まで自主練で訓練場が埋まっていてな。私やアルティンのような実戦経験のあるものは訓練場を使用できない。そこで父上に相談したのだ。そしたらリョウを頼れとな。」
「わかりました。場所はお貸ししましょう。が、私が稽古のお相手をする理由が見当たりませんが。」
「そんなものは簡単だ。父上が言っていたよ。リョウなら近衛騎士団長ですら単独では抑えられないほど強いとね。だったら戦いたくなるものだろう?」
「私もお相手していただきたく思います。近衛騎士団長である父ですら抑えられないとまで言われるその実力、ぜひお見せくださいな。」
はぁ、仕方ないか。
「かしこまりました。これからでよろしいですか?」
「ああ。」「はい。」
ごめんローズ、ベラ。
少しの間お店をお願いね。
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