第18話 綺麗な〇〇の秘密

キュッキュッ。


僕は今、普段通り店で過ごしている。


カウンターの後ろで喫茶店のマスターに求める理想像その4の行動である、カップ磨きをしながら。



ふと店内に視線を向ける。


店内は、最近売り出したかき氷などの冷たいおやつめあてに親子連れもよくくるようになった。またいつも通りのお客さんもいる。


クリームソーダをこぼさないようにおどおどしながら食べる子供とそれをみて笑顔でコーヒーをのむ母親。うん、美味しそうに食べてくれてる。嬉しい。


楽しそうに談笑する若いご婦人たち。テーブルにはトップではないけど安定した人気を誇るロシアンティー。話してる内容が夫や彼氏の愚痴と陰口じゃなければいい絵になる。

…内容がこうでなければ。


カップルらしき男女もいる。女性の方はスコーンがとてもお気に入りらしい。男性はそれをみて微笑んでる。まぁデートするにはぴったりなくらい、スイーツが多い自信があるし、やったぜって感じだね。


カウンターに座ったお客さんたち3人は、給仕してるベラと厨房にいるローズのことを話してる。


「ねぇねぇ、ここの女の店員さんってみんな髪きれいだよね〜。」


「だよね〜、何か秘訣あるのかなぁ?」


「マスター、秘密あるんですかぁ〜?」


あらら、巻き込まれちゃったよ。


まあ、答えはーー


「うーん、秘密です。」



で、終わりなんだけどね。


「て、店長〜、外で売ってたアイス、売り切れちゃいました〜。」



扉を開けてリリが入って来た。


「あ、この子も髪きれい‼︎」



「ねぇ、どうしてこんなに髪きれいなの?」


あ〜あ、リリまで巻き込まれた。


「あぅ、え、えっとそのぉ、店長さんが作るシャンプー「リリ、着替えておいで。ちょっと早いけど楽器の練習しよっか。」


「は、はい。」


ダメだダメだ。バレたら作る量が増えちゃう。




そんなのめんどくさいからやだ!


リリが裏に行くのをみて、僕も片付けていこうとカウンターの方へ振り返ると、ある意味で「いい」笑顔のたくさんの女性客が僕をみてた。


怖。


ただそれに尽きる。



んじゃ、練習してきまーす!


じゃね!







結局逃げきれず、ベラがバラしちゃって、喫茶店なのに持ち帰り商品にシャンプーとリンス、トリートメントが追加され、かなりの収益を上げるようになったのはまた別のお話。

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