第8話 姫騎士 5
「すいません。聞き間違えかもしれないのでもう一度お願いできますか…?」
「ん?王金貨300枚では足りなかったかな?」
なんなのこの人。金銭感覚おかしくない?
日本円で大体3000億円だよ?人一人のためだけの薬に。お貴族様すごいや。
というより、平民の僕がそんな額のお金をもらったらめんどくさいことになっちゃう…。
「そうだなぁ、王金貨450枚でどうだ。」
え、ちょっと待って。足りないなんて言ってないよ?むしろ多すぎるんだけど!
どうしよう…。
コンコンコン
あれ?ドアがノックされた。
「お父様、アメーリアです。入っても?」
あ、アメーリア様か、着替え終わったんだね。
「ああ、入れ。」
「失礼します。」
ーーーー
「改めて自己紹介をされていただきますわ。アーガイル公爵家三女、アメーリア=アーガイルです。よろしくお願いしますね。」
部屋に入って公爵様の横につくと僕に向かって自己紹介をしてくれた。カーテシーと一緒に。
すっごく綺麗だ。ホントに。姫騎士モードの時にはまとめている長い金髪をおろし、凛とした雰囲気だったのが一変してふわりとしたお嬢様然としたもとになってる。
普段着なのか装飾の少ない青いドレスを着ているがそれが彼女の魅力をより一層引き立てているみたい。
ーーーー
「あ、あのぅ…リョウ様?」
はっ⁉︎や、やべぇ見惚れてた…。
てかアメーリア様反則だよ、ここに来るまでみたいに騎士っぽい喋り方じゃなくてお嬢様みたいなんだもん。
「す、すみません。ぼーっとしてしまって。」
「はっはっは、さてはアメーリアに見惚れてたな?」
うわ公爵様楽しそう。
「ちょっとからかわないでくださいよ、アメーリア様に申し訳ないです。アメーリア様も何か言って…」
言いながらアメーリア様の方を見ると、顔を真っ赤にして口をパクパクさせているアメーリア様がいた。
あーっもう!可愛いなぁちくしょう!
「お、お父様‼︎お戯れが過ぎます!」
真っ赤な顔したままアメーリア様が怒る。
「なんだお前、照れてるのか?」
さらにからかわれて、恥ずかしくなったのか部屋の隅の方に行ってしまった。
「……。少しやりすぎたかな、話を戻そうか。エリクサーは1本でいい。王金貨450枚で売ってくれ。」
ホントにその値段払うつもりなんだ…。
あ、あの高すぎるんですけど…。
「高すぎるって言ったって最高の薬だぞ?傷と病気を癒し毒も抜く、その上魔力増強の能力もあるものだ、それくらいはするだろ?」
「いえ、材料費だけで銀貨2〜3枚、手間賃とっても大銀貨1枚も頂ければ充分です。」
「ちょっと待て、なぜその値段でエリクサーが作れる?それだと最上級の10級どころか8級回復ポーションより安いぞ?」
え?マジで?ポーション高すぎでしょ?
「え?そうなんですか?僕は冒険者時代に自分様のものは自分で作ってたので知りませんでした…。でも材料は一つを除けばこの街の市場で買えますしねぇ。その一つのものも僕なら簡単に手に入ると言ったところでしょうか。なので大銀貨1枚以上の額は頂きません。」
「そ、そうなのか…。わかった、では大銀貨1枚で買おう。その上でそれとは別になにか報酬を出そう。」
「いえ、遠慮しておきます。僕は今の生活が続けられればそれでいいので。」
「うーむ、躱されたか。兄に爵位でももらえるよう頼もうかと思ったのだがな。」
兄って…。公爵様が王弟だから国王様じゃないですかやだー…。
なんとかして話を逸らさないと…。
「あのぉ、とりあえずエリクサーを奥様に…。」
「あ、そうだな。が、私はこの後にも面会しなければならない人がいるのでな。アメーリア、リョウ殿をご案内しろ。」
……。
アメーリア様まだ拗ねてる…。
かわいい。やばい。ナデナデしたい…。
で、そのまま「かしこまりました。リョウ様ついてきてください。」とだけいって、部屋から出てしまった。
「すまないね、でもかわいいだろ?」
とかニヤついていたので嫌われますよ?って言ってから部屋を出た。言った瞬間のしまったという顔を見て笑いそうになったのをこらえながら。
ーーーー
部屋を出るとアメーリア様が待っていた。
「…ついてきてください。」
少し拗ねたままで。
案内されるままついて行く途中、
「先ほどはごめんなさいね、お父様はいつもあんな感じで…。」
うん、なんとなくわかってた。
どっちかっていうとモードチェンジする貴女のことのほうが気になるんですが…?
「あ、それはですね…。」
なんと両親との約束らしい。自分が貴族社会で生きていくのは無理そうだから20になる前に家を出て騎士なり冒険者なりになると親に伝えたら許可は出たけど姫騎士モードじゃない時は公爵家の娘でいてくれって話みたい。冒険者活動は家を出るまえから許されていたら知らない間に姫騎士なんてあだ名がついたってところ。
ーーーー
話をしているうちに着いたみたいだ。
コンコンコン
「お母様、アメーリアです。お客様も一緒ですが入ってもよろしいでしょうか?」
ガチャリ。どうぞとメイドさんが内側から開けてくれた。
「あらあら、娘が男の子を連れてきたわね。結婚の挨拶かしら?」
「お、お、おお、お母様⁉︎⁉︎」
まーたこのパターンかよ、娘いじり好きすぎだろ…。
ーーーー
そのまま少しお話しをさせてもらったが、病気は魔侵病と呼ばれるものみたいだ、なんらかの理由で自分の体内許容量を超えて魔力を取り込んでしまうようになり、体のあちこちに負荷がかかるものだ。完治させるにはエリクサーしかないものだった。
魔力増強、つまり体内魔力の量を増やすことができることを利用し過剰分の魔力分も許容量にしてしまうことで解決をする。
で、エリクサーをメイドさんの毒味の後飲んでもらって治療は終了。
公爵家の依頼は終了した。
ーーーー
あの後、昼食をご馳走になった。うまかったよ?さすがにローズにはかなわない感じだったけど美味しかった。
これから宿まで送ってくれるらしいんだけどね、使用人さんたちが総出でお見送り。みんな口々にお礼を言ってくる。公爵家ら使用人に愛されているみたいだね。
でもまさか、宿の暇な時間に暇つぶしで作りましたなんて言えるわけもなく、ただ良かったですねとしか言えなかった。
ーーーー
なんやかんやあって行きと同じく、馬車でアメーリア様と宿まで戻ってきた。
あーかえってきたぞー!!
「リョウ様。」
あ、やっべ。アメーリア様のこと忘れてた。
テヘペロ。
はい、なんですか?
「私はまだ18ですがもうすぐ家を出ようかと考えています。その時、この宿に厄介になってもよろしいですか?」
「ええもちろん。同い年の友人が宿を利用してくれるなんてとても嬉しいことです。お待ちしていますよ。アメーリア様。」
「アミィです。」
え?
「私のこと、アミィと呼んでください。」
えーとそのぉ…。
「あ、アミィ。」
「はい♪」あれ、るんるんになってる。
その後、また来ますね。と言って僕のほっぺにキスをしてから馬車で帰って行った。
僕はその小さくなっていく馬車をほっぺを抑えながら見ているしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます