相談





「ちょっと!!!」

放課後、家に帰ろうとしたら要ちゃんにグイッと服を引っ張られた。あ、LINE勝手に教えたの怒ってるんだ。

「あ〜、ごめんね」

「...謝ればいいってもんじゃない!」

殴られるかなって思ったけど要ちゃん、そのままツカツカと早足で帰っちゃった。


「なんてことが今日あったんだ」

夕飯の時に姉さんに今日あったことを伝えると姉さんは一瞬固まってから明らかに怒ったような顔つきになる。

「あんたさぁ...それ要ちゃんに謝ったって言わないから」

「でも...」

「ていうか、要ちゃんの許可なしに教えるなんて最低じゃん?はやく要ちゃんに電話なりなんなりで謝罪してきなよ」

言い忘れてたけど昔は泣き虫だった姉さんは今では怒らせると要ちゃんより怖いです。だから自分の部屋に入ってすぐさま要ちゃんに電話しました。


「...要ちゃん」

「.....」

電話には出てくれたけど要ちゃんは無言です。

「要ちゃん、いや、要さま、本日はとんだご無礼を...」

「.....」

これ、すっごく怒らせたのでしょうか、まだ口を開いてくれない要ちゃんにちょっと威圧感を覚えながらも謝罪をしようとまた俺は口を開きます。

「...あ、あの...さ」

やっと要ちゃんが喋った、よほど頭に来たのか声が若干震えてました。

「.....告白...って、どう断れば...」

「え?」

あれ、怒ってない、怒ってるどころか弱々しい。

「あ...要ちゃん、ちょっと待ってて」

何ででしょうか、俺は少し好奇心が出てしまい、電話で話を聞けばよかったのにこんな時間に関わらず要ちゃんのマンションまでわざわざ話を聞きに行ってしまったのです。


「要ちゃん、優希です」

「え!?あ、え?」

「お話し聞きに来た、開けて」

しばらくしてから鍵が開く音がしてゆっくりと要ちゃんが扉を開きました。

「...なんで来たんだよ」

「いやぁ、ちょっと気になっちゃって」

明らかに困惑しながらも要ちゃんとテーブルを挟んで向かい合います。

「...告白って、どう断ればいい?」

しばらくの間が開いていつもの人が怖がるような要ちゃんの雰囲気はなく、明らかに動転している要ちゃん。

「え、普通に、ごめんなさいって」

とは言ったけど俺、断った試しないかも。

「あ...、相手は傷つくんじゃないか?」

「じゃあ付き合っちゃえば」

「で、でも好きでもないのに付き合うのは相手に失礼だし...それこそ傷つくし...」

要ちゃんは下を向いて顔を真っ赤にしている。

あぁ、姉さんには謝れって言われたけどなんかからかいたくなっちゃった。


「要ちゃんはその子の返事をどうしたの?」

「え...まだ.....」

「なんか期待しちゃうんじゃない?その方が一番可哀想だよ」

「えぇ...あ、だって.....」

あ...やば、泣かせちゃった。

十年以上要ちゃんを知ってるけど泣いたのはじめて見たかも。これ姉さんにバレたら殺されますね。

「も、いい...帰って」

「やだ、要ちゃんがその子に返事を返すまで帰らない」

それを聞いた要ちゃんは余計にボロボロと涙をこぼす。

「もう...どちらにせよはっきりしないと可哀想だろ?ほら、俺も見てるから大丈夫だってば」

「...ほんと?」

まるで小さい子供みたいに涙を人差し指で拭ってあげるとまだ納得いかないような顔をしながらも要ちゃんはゆっくりとお断りの返事を送る。


「よしよし、よくできました」

涙を浮かべながらも返事を相手に返した要ちゃんを撫でるとさっきまで泣いていたから赤く潤んだ目をしながらもパシッと俺の手を退かす。

「...何様だよ」

「...さっきまで大泣きしてたの誰?」

「...知らない」

「要ちゃんが泣いてたの姉さんに言っちゃうよ」

言って怒られるのは俺だけど。

「そ、それはだめ...!」

「嘘だよ、言わないよ」

多分姉さんの前では弱音を吐いたりなんかしなかったんだろう、俺もこんな要ちゃんはじめて見たし。終電間に合わなくなるから帰ろうかと立ち上がると要ちゃんに服の袖をそっと引っ張られる。


「...もう少しいれば?」

「そしたら俺、タクシーで帰ることになっちゃうの」

「だから...帰らなきゃいいじゃん」


えっと...これはなんだろ、誘ってるのかな。

要ちゃんは泣いた後で目は潤んでるし露出度が高いわけじゃないけど部屋着姿が異様にエロくてさっきから俺も限界なんですが...。

「要ちゃん」

普通の女の子ならもうとっくに押し倒してるから要ちゃんにもそうしそうになっちゃったけど代わりに要ちゃんの頬をムニッと抓る。

「だめです、 それに早く寝ないと目腫れて泣いてたのバレちゃうよ」

「う...」

さすがに泣いていたのがバレるのは嫌なのか要ちゃんは諦めたような表情をするのを見てから玄関まで行って、帰ろうとすると要ちゃんが付いてきてちょいちょいっと背中を叩く。

「明日...、明日ならいい?」

「...はぁ、考えとくよ」



なんとか要ちゃんの家を出たけど色々危なかった。

本気で今日要ちゃんの家に泊まりそうになっちゃった。


...ていうか要ちゃん可愛いね。









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