第93話 糖尿病 (1) 糖尿病予備軍

 俗にいう糖尿病予備軍とは、医学的に、耐糖能障害とか境界型糖尿病の人々をいいます。耐糖能障害とは、正常と糖尿病のあいだに位置づけられる糖の代謝障害をいい、これから糖尿病になろうとしている予備的状態なのです(←(^ω^)妙な表現)。


 糖尿病予備軍は、現在日本に2000万人強(6人に1人)いるといわれていて、私もその1人に選ばれたのです(←(^ω^)どうだい?!……)。


(糖尿病予備軍なんて、糖尿病のお迎えが来ているような感じがして、なんとなく不名誉な呼び名ですね。自分が患者になってみると、そんな気持ちがよく分かります。)


 私が自分の耐糖能障害に気付いたのは、15年ほど前のこと。


「一病息災」とはよくいったもので、まったく病気の無い「無病」よりも、1つくらい病気を持っていたほうが自分の健康に注意して、より息災(健康)なので、そういわれているのです。私にとってのこの「一病」は、高脂血症でした。


 もともと高脂血症がありましたので、私はその治療薬のスタチン系薬を飲み、コレステロール値や血糖値を含む血液検査を定期的に受けていたのです。ところが、空腹時血糖は計っても毎回正常なため、糖尿病はまったく注意しませんでした。


 ところが、たまたま空腹時検査といわれていたのに、食事を食べてしまい、その3時間後くらいに採血してみると、血糖値が130と少し高めに出たのです。「食後だから当たり前だ」とまたまた無視してしまいましたが、その時初めて、自分の血糖値に関心を持ったのです。「一病」の高脂血症のおかげです。


 しばらくしてまた血糖値を計りますと、今度は空腹時なのに、120近くあるのです。正常血糖値は空腹時では110未満といわれていますから、初めて「おや?少し高めだ」と思いました。(←(^ω^)医者のくせに鈍感だね。トホホ)


 それからというもの、血糖測定に火がついたのです。まめに血糖値を計り始めましたが、空腹時で時々110を越えるのです。


 HbA1Cといって、血糖値の1~2カ月間の平均値とみなされている糖尿病の指標があります(⇒豆知識)。それは5.4

(JDS)くらいと正常範囲内にありましたので、まあ大丈夫だろうと高をくくっていました。ところが調べるたびに、HbA1Cが少しずつ上がってきたのです。とうとう5.8と正常上限になってしまいました。


 そうこうしているうちに、ある昼休みどき、医局で血糖値測定器(商品名:テルモ製メディセーフミニ)の使用説明会がありました。血糖値の在宅測定が、保険適用になったからです。


 説明の後、私もついでに計ってもらいました。昼食後1時間くらいで150台でした。他の同僚はといえば、大体が100~120で、私が特に高いのにびっくりしました。


 すぐに私は、その測定器を自費で買ったのです。大体、1万円くらいでした。(ちなみにインシュリンを打っている糖尿病の人には、その測定器は保険がききます。)そこで普通に食事をして1時間後に計ると、160~180はあるのです。これをどう評価したらいいものか、迷いました。


 いろいろ医学書を調べましたが、食後血糖の正常値というのは、当時どこにもはっきりとは書いてないのです。糖尿病診断のブドウ糖負荷試験には、1時間後で160未満という正常値があります。


 さらに随時血糖値(好きな時に計った値)が200を越えれば糖尿病という基準はあっても、普通の食事を取った時にどれくらいの血糖値が正常かは書いてありません。その中間のデータはまだ出ていなかったのです。しかし高めなのはまぎれもない事実です。


 やっとのことで、私は自分の耐糖能障害に本気で取り組み始めたのでした。


* 豆知識


①HbA1C(エイチビーエイワンシーと発音します)


 赤血球の中に存在するヘモグロビンは、血管内のブドウ糖と少しずつ結びつき、グリコヘモグロビン(HbA1C)を形成します。


 HbA1Cは、採血前1~2ヶ月間の血糖値の平均を反映します。


 正常値(JDS)は、4.3~5.8%(NGSP:4.7~6.2%)で、6.1%(NGSP:6.5%)以上であればほぼ糖尿病型と判断して良いことになっています。(参照:http://www.furano.ne.jp/utsumi/dm/hba1c.htm)



② 従来日本では、日本糖尿病学会(Japan Diabetes Society; JDS)により、検査の国内標準化が行われていましたが、国際的には米国のNational Glycohemoglobin Standardization Program; NGSP が標準化に採用されています。2012年4月より日本でもNGSPが臨床検査に用いられています。


  換算式: HbA1C(%, NGSP)=HbA1C(%, JDS) X 1.02 + 0.25  ⇒ HbA1C(JDS) が 5.0% ~ 9.9% の間であれば、0.4% を加えると、NGSP値に換算できます。


③ 糖尿病の診断:


1) 血糖値(空腹時≧126 mg/dl、OGTT2時間≧200 mg/dl、随時≧200 mg/dl のいずれか)


2) HbA1C(NGSP)≧6.5 % [HbA1C(JDS)≧6.1 %]


④ 「血糖値測定器ねっと(http://tou-nyou.jp/select.html)」には、血糖値測定器の比較と選び方が載っていて参考になります。




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