after第63話 スキル「プロアクションマジリプレイ」が凄すぎて異世界で最強無敵な上に神になったのにやっぱりニートやってます。

「た…つや…」


フーカの目に涙が浮かぶ。

別れのゴンザレス太郎からのキス。

フーカには何となく分かっていた。

ゴンザレス太郎が生き返れる回数がもう殆ど残ってないことを…


「あ、あれじゃあもう…」


別空間に閉じ込められ死に続けるのを理解したミリーもその場に座り込む。

その目からは涙が止めどなく溢れる…


ダマとデウスも諦める事しか出来なかった。

特にデウスはその力を全てバグに奪われているので最早普通の人間と殆ど同じであった。


「くははははははは!!!いいよいいよ!お前たちのその表情は最高にいいよ!」


勝利を確信したのかバグが高らかに笑い声を上げる。

そんなバグをフーカはキッと睨み付ける!

その瞳はもうオッドアイではなく普通の黒目であったが涙が溜まり輝く。


「負けない!」

「ん?なんだってぇ~?」

「タツヤは、私のヒーローは絶対に負けない!最後にはあんたなんて後悔の二文字を頭に浮かべて消えるだけよ!」

「かっかっかっかっ!お嬢ちゃん頭大丈夫かぁ~?アイツはな死んだんだよ!しかも何度生き返っても死に続ける空間で永遠に一人でな!」

「負けない!タツヤは!私が信じる限り絶対!誰が相手でも最後には勝って私のところに戻ってくる!」

「おーおーおー、愛の力ってかぁ~人間の考えは本当におもしれーなー!」


バグは動けないフーカ達に近寄る。

そして、胸元を影のようなもので掴み引き寄せる。


「ほら、愛しの王子様の名前を呼べよ助けを呼んでみろよ!」

「タツヤ…」


フーカの目から一粒の涙が落ちる。

それは地面に出来たフーカの影に当たり…

そこから手が生えてきてバグの腹部に触れた!

そして、影から顔が出て叫ぶ!


「スキル『タイムリープ』発動!」


誰もがその姿を見て驚きの表情を浮かべた!

水色のショートヘアーの少女がフーカの影から出てきたのだ。

ここにいる全員が知っている…スウである。


「おっお前は?!」

「俺の女に手だしてんじゃねぇぇぇ!!!」


大人しいイメージのスウからまるでヤクザみたいな声が出てバグの姿が消えていく。

もう向こうの声は聞こえなくなり半透明のバグに向かって一言…


「俺の勝ちだ!」


まるで怒り狂い憎悪の塊みたいな表情を浮かべたままバグはその姿を消した。


「た…タツヤなの?」

「あぁ、俺だよフーカ」


見つめ合う二人…

百合が百合百合しそうな所でミリーから突っ込みが入る!


「とりあえずせ、つ、め、い、し、ろ」

「あっはい…」


そしてスウの姿のゴンザレス太郎から話された事実に目を丸くして神3人は唖然とする…


「スキルを斬った?!」

「あぁ」


最後の突撃でゴンザレス太郎が発動した『一刀両断』その効果は『一生に一度しか使えない望むモノを斬るスキル』である。

ゴンザレス太郎はこれを使ってフーカがパンドラで産み出したスキル『転生タイムリープ』を『転生』と『タイムリープ』に斬り分けたのだ!

そして、バグからの『発狂死』でゴンザレス太郎は死んでスキル『転生』で生き返れる先が選べ、その中にスウの項目が予想通りあった。

ゴンザレス太郎は迷わずそれを選び仰向けで最上階に寝ていたスウに生まれ変わる。

そして、直ぐにプロアクションマジリプレイを発動させ準備をしてスキル『影移動』でバグがフーカに近寄った時を見計らって飛び出したのだった。


「な、なんでわざと死ぬ必要があったのよ!」

「ん?ミリー相変わらず抜けてるな、アイツの目の前で堂々とスキルを斬り分けたりなんかして言霊で対策打たれたら終わりだろ?」

「な…なるほど…」


戦いに関してはゴンザレス太郎の天武の才には勝てないと悟りミリーも納得する。


「はははっ全く大したヤツだよあんたは!」


デウスが妙に近い距離まで近付いてで背中を叩いてくる。


「それでバグはどうなったんだ?」

「スキル『タイムリープ』でその名の通り『時間跳躍』させて未来に飛ばしました。ずっとずっと未来の果てに…」








バグは時間跳躍をしていた。

不幸な事に様々な攻撃に関する事象を言霊で防いでいたのだが時間跳躍は移動魔法だった為に対象から外れていたのだ。


(これは何処に飛ばされたのだ?だが俺には言霊がある!過去に戻る方法を必ず見つけてアイツらを皆殺しにしてやる!)


そして、長い長いタイムトラベルを終えてバグは通常空間に戻る。

そこはゴンザレス太郎がスキルで選べた最果ての未来。

すなわち宇宙が終わるその瞬間であった。

実に年で数えても不可説不可説転を超える年数の果て。


※不可説不可説転とは数の単位の最大桁を現す言葉。1無量大数が1の後に0が64個並ぶのは有名だが1不可説不可説転は1の後に0が37潤2183溝8388穣1977�僞6444垓4130京6597兆6878億4964万8128個並びます。


そして、通常空間に出現したバグ!

(よし、言霊で・・・)

その意識はその瞬間に宇宙と共に消える。

言霊を発動するタイミングなど無く口を開く時には既に消滅していた。

もしも宇宙が終わっても生き残れるように事前に言霊を使っていれば助かったかもしれないが…

最後の最後までゴンザレス太郎の方が一枚上手だったのだ。






「宇宙の終わる瞬間に飛ばした?!」


ダマの驚きに裏返った声が響く。

フーカ以外はそのとんでもない現象を理解した。

遥かこの世の終わりまで飛ばすのに一体どれ程の魔力を消費したのか・・・

これは本当に偶然であった。

スウの体に宿っていたバグ修正プログラムがその任務の為MPを異常な量保有していたのだ。

更にゴンザレス太郎はコード『限界突破』コード『MP2倍』ユニークスキル『全能力強化』を使用していたためギリギリ間に合ったのだ。


スウの体になったゴンザレス太郎にフーカは抱きつく・・・

身長差がひっくり返ってフーカの方が背が高くなっているがいつものように片手を背中に、片手を頭に置くゴンザレス太郎。


「信じてた・・・本当に信じてた・・・」

「あぁ、フーカが信じてくれたからこそ俺は勝てたんだ」


二人の空間に3人の神も安らいだ顔を見せるがそれも直ぐに終わりが来た・・・

ゴンザレス太郎の体から光の塊が徐々に空へと登り始めたのだ。


「タツヤそれ?!」

「あぁ、この体は元々もう限界だったみたいだ。」

「そ・・・そんな・・・それじゃあ」


それは元から分かってた事・・・

スウの体はスペニが死んだ時に消えるはずだった。

それが今まで消えなかっただけなのだ。


「タツヤ、最後の最後まで本当にありがとう。君が居なかったらダマもデウスも助けられなかったし世界は終わっていた。感謝してもしきれないよ、でもこれだけはどうしようも無いんだ」

「いいんだミリー、全て分かっていた。」


ゴンザレス太郎自身も自分の魂が限界だと言う事に気が付いていた。

フーカの手を取りゴンザレス太郎は塔の外へ出る。

天弁地異の災害はバグが消えた事で収まっており、空からは太陽が顔を出していた。

その光に照らされて空を見上げるゴンザレス太郎・・・

その体は既に透け始め消滅は時間の問題だった。

そしてゴンザレス太郎は小さく呟く・・・


「駄目だったのか・・・」


その時、太陽の光の中に何かが見えた。

空を飛ぶように物凄い勢いで真っ直ぐに突っ込んでくるそれには見覚えがあった。

まるであの時と同じ光景・・・

それは勢いが凄すぎて通った後の場所が抉り取られ真っ直ぐにスウの体のゴンザレス太郎に向かって一直線に飛んできた。


「あれは?!」


フーカの声と共にそれはゴンザレス太郎に突っ込みそのまま地面を転がる。

サラであった。

その背中には純白の羽が生えており魔族の姫なのに天使のように思えた。

そして、消え去りそうになっているゴンザレス太郎に手に持っていたそれを押し付け・・・


「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」


そして光がゴンザレス太郎を中心に輝き周囲を包み込んだ!











数日後、魔物の町。


「これはこれはフーカ様、サラお嬢様は少々手が離せなくて・・・」

「こんにちわニセバスチャン、今日はサラもだけど魔王さんに用事があって」

「それでは今日こそは決心されたのですね!」

「まぁ私だけってのは納得いかないしね」


ニセバスチャンはフーカを魔王の元へ連れて行く。

もう来るのに慣れたフーカはまるで我が家のように違和感無く道を進む。

そしてその部屋の扉をニセバスチャンがノックしドアを開ける。


「ん?ををっフーカじゃないか、っと言う事は決心がついたのだな?」

「お久しぶりです魔王さん、決心と言うか・・・私だけ仲間はずれみたいですからね」

「ははははは!仲間はずれってそんな程度の事では無いだろうに」

「もぅ、分かってますよ。そんなに笑わなくてもいいじゃないですか」

「すまんすまん、ほらっコレを使うと良い」


そう言って七色に光るそれをフーカは手渡される。

それはサラの母が死ぬと同時に変化した『魂石』。

フーカはお礼を言って部屋を出てその足で魔王城のゴンザレス太郎の部屋に行く・・・


「タツヤー!貰って来た・・・」


ドアを開けてフーカは固まった。

目の前ではスウの姿のゴンザレス太郎がミリーとデウスに押し倒されて脱がされていた。


「タツヤー私も愛して~」

「余にも愛を分けて欲しいのじゃ~」

「お前等無理やり襲っておいて愛してとかどういう了見だ?!」


艶かしい肌が見えている青髪少女のゴンザレス太郎が文句を言いながらも本気で抵抗していないところをみると満更でもないというのは直ぐに分かる。


「なにやってるのかなぁ~?」


フーカは相変わらず前髪で目が見えないが背中に般若の顔が浮かんでいるので起こっているのは分かる。

そのフーカを見て二人は慌ててゴンザレス太郎から離れ正座する。


「いや、余は止めようと言ったのじゃがミリーのヤツがな」

「ちょっあんた何言って?!」

「二人共私が話しているんだけど・・・」

「「ごめんなさい」」


二人揃って土下座しているミリーとデウス。

これがこの世界を作った神というのだから本当に困ったもんだ。


「それで貰って来たんだな」

「うん、遅くなったけど決心したよ」

「よし、それじゃサラが来たら始めるか」


数分後サラが部屋にやってきたので一同は庭に出て見守る。

中央にゴンザレス太郎とフーカが向かい合って立ちその手にはサラの母の魂石がある。

フーカはその魂石を胸に押し付けるようにして目を瞑る。


「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」


ゴンザレス太郎がスキルを発動させコード『状態異常を付ける』を選択しフーカに『神化』を付ける。

これは本来人間には使用できない状態異常。

存在の位が違い人間相手には本来使用が出来ないのだ。

そこで使うのがサラの母の変化した『魂石』である。

この効果は使用者の存在の位を上げる効果である。

存在の位が上がると言う事は更に上位の生物に生まれ変わると言う事。

かつて鬼の大群が魔物の町を襲ってこれを手に入れようとしたのはコレが目的だったのだ。


そして、まばゆい光が魔物の町の庭に広がりフーカも神となった。


最初はサラであった。

どんな回復手段を使用してもゾンビシズクの聖剣の傷は治らない。

その為、ゴンザレス太郎がサラを死なせない為に選んだのがサラの神化であった。

だがその為にはサラの母親の魂石が必要だ。

なのであの時ゴンザレス太郎はコード『パーティーメンバーに加える』で魔王を呼び出して事情を説明した。

驚く事にサラは転生タイムリーぷの事を魔王に既に話しており二つ返事で了解が貰えた。

本来なら魔王の奥さんの形見とも言えるそれを直ぐに使わせて貰えたのは・・・

サラが過去に母親の魂石を魔王城の地下に埋めて残していたからだ!

その場では不可能だったのでサラを魔王が街まで連れて帰りサラ自身に付けていたプロアクションマジリプレイで自身を神化して助かった貰ったのだった。


そして、あの時ゴンザレス太郎が消えそうになった時にサラはかつての本能でゴンザレス太郎の位置を感じ取り魂石を一つ抱えて飛んで来た!

近くに来てからは探し回っていたのだが塔からゴンザレス太郎が出た事でその場所が判明し危機一髪スウの体のゴンザレス太郎を救う事に成功したのだった。







「それでこれからどうするの?」

「まだ俺たち南の方へは旅してないから500年くらいニートしたら行ってみるつもりだ」

「その時は余は同行させてもらってもイイのか?」


ゴンザレス太郎のスキルで神の力を戻した貰ったデウスは積極的にアプローチを続けミリーを差し置いて3人目の妻の座を狙っていたりする。


「分かったよ、その時は呼ぶからデウスも一緒に来るといいさ」

「うむ、楽しみにしているぞ」


3人の神はそう言って神の世界へ帰っていった。

残されたゴンザレス太郎、フーカ、サラの美女3人組はこれからも仲良く暮らしていくだろう。

3人共神となり寿命が無くなったので永遠に楽しい毎日を送るに違いない。


「ところでさ、このユニークスキル『パンドラ』でさ部屋を掃除しなくても元通りになるスキルとか作ってみない?」

「作っても一生涯に1回しか使えないんだよ?」

「あ~そっかそうだよな・・・」


相変わらず馬鹿な事を言ったりやったりして面白おかしく暮らしていくだろう・・・

3人共ゴンザレス太郎の手によって神となりユニークスキル『プロアクションマジリプレイ』を持っているので困る事もあるまい。


「ねぇサラ、とりあえずさ、6人で寝ても大丈夫なベット作ったほうがイイと思わない」

「う~ん・・・フーカさ、ダマもタツヤに惚れてるって思ってる?」

「そう思うんだけどね~」

「あ~あれは無いわ多分www」


実はダマもタツヤに惚れているのだが自分で自分にキャラを作っているので正直になれないままのダマ。

唯一フーカにだけその本性が見抜かれていたのをまだ本人は知らない・・・


「それじゃ、今日は俺はベットでゴロゴロするぞ~」

「じゃあ私はタツヤをマッサージしてあげるね」

「サラズルイ!じゃあ私は・・・」


こんな日々がこれからも永遠に続くだろう。

これは彼等が勝ち取ったものだから・・・




----- 本当に 完 -----



これにて『スキル「プロアクションマジリプレイ」が凄すぎて異世界で最強無敵なのにニートやってます。』 は完全に完結です。

チートを使った異世界物で何か誰もやってない面白い事無いかな~って事から始まったこの作品、当初はフーカがアンドロイドで彼女にコードを打ち込む事で発動するって形を考えたのですが・・・

どうせやるならもっと奥深いストーリーに組み上げて複線をたっぷり仕込んで結末から考えて作ってみよう!と考えて書き始めたのが始まりでした。


今年の初めにいきなりネットでの週間期待ランキング1位とかいただきまして本当に驚いたのも今では懐かしい思い出です。

最初見た時に書いた人が『期待』と『嫌い』を打ち間違えたのかと思いましたよwww

RとTは隣ですからねwww


アフターに関しては本編で語られなかったフーカの記憶が無い理由だとか魔王を異世界へ転生させた神を出現させたりとか色々やり足りなかった事を全部やれてよかったと思ってます。


今回ここまで呼んで下さった方、感想や評価をして頂けると嬉しく思います。

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