after第59話 それには誰も抗えない

スペニがスウの首を片手で締め上げて持ち上げる。

麻薬のせいで意識が朦朧としているスウは抵抗することなく呼吸を止められ手の力が抜ける。


「ではゾンビ化させます。」


スペニの手から紫のモヤが発生しスウの体を包み込む。

そして、それが口などから体内へ入り始めた時にそれは起こった。

モヤが一斉に飛散したのだ。


スウノ体が突然中に浮きその目と口が闇に包まれ黒い穴となる。


「な…なんだこれは…」

「スペニよ何か嫌な予感がするぞ」

「い、今殺します!」


スペニがスウに殴りかかる。

ゴンザレス太郎ですらも一撃で瀕死に追いやる攻撃だ!

だがその攻撃はスウの体の表面に浮かぶモヤにぶつかり止まる。


「うわぁぁぁぁぁ?!」


その時スペニは悲鳴を上げた!

触れているそのモヤから恐怖の思念が流れ込んだのだ。

そして…


「ぁぁあ…」


スペニは恐怖のあまり絶命した。

それを見ていたデウスは理解した。


「そうか貴様、バグ修正プログラムだな」


その言葉を聞いてデウスの方を向くスウだったもの。

まるで地面をエスカレーターが流れているようにそのままの姿勢で滑るように接近してきたそれに向かって。


「『吹き飛べ』!」


その言葉でスウだったものは車に撥ね飛ばされたかのように後方へ吹き飛ぶ!

しかし、その顔色は真っ青であった。

理解をしていたからだ。

それは殺すことも出来ずバグの原因を消すためだけの存在だからだ。


「『スペニよ生き返って盾になれ』!」


死んでいたスペニが生き返って立ち上がりデウスの前に立つ。


「暫く時間を稼げ!」


デウスの命令にスペニはスウだったものに飛び掛かるがスウだったものはその時には既にデウスの背後に回っておりそのオーラがデウスを包む。

それを止めようとして飛び出したスペニだったが既にデウスは操り人形と化しており、その首をデウスは掴み。


「『衰弱死』!」


その言葉と共にゴンザレス太郎がドアを破壊して中へ入ってきた。

それを横目で見たスペニはデウスの言葉通りに直ぐにミイラの様に衰弱しそのまま死ぬ。


「一体なにがどうなっているんだ?」


ゴンザレス太郎の言葉に反応したスウだったものはその目を向けた。

その存在が攻撃するのは本来この世界にあってはならない存在。

そう、今のゴンザレス太郎はコード『限界突破』でステータスは上限を超え、二つしか付けられないユニークスキルを4つ付けていた。

そのため削除の対象になりスウだったものはデウスを操り…


「『死ね』!」


恐るべきはその能力である。

デウスが力を込めて放った言葉は実現する。

そこには意思や因果すらも関係無く…

跪けと言われれば跪かされる、生き返れと言われれば生き返る、そしてもちろん…

言葉通りにゴンザレス太郎は死んで前に倒れた。


デウスはそのまま倒れているフーカの前まで歩いていき…

地面ごと吹き飛ばされた!


「フーカに触るな!」


会得したばかりのリレイズを使用していた為にゴンザレス太郎は直ぐに生き返ったのだ!

そして、とりあえずフーカから離すために打撃や魔法が無効だった場合を考えて地面ごと吹き飛ばした。

しかし、これがゴンザレス太郎の失敗であった。

吹き飛ばされたデウスとスウだったものはそのまま後ろに倒れこんだ。

スウの上に乗っかる形でデウスが落ちたのだ。


「『取り込まれろ』!」


それは一瞬だけデウスの意識が戻ったのを利用された形であった。

本来なら取り込むことは不可能だったのだがデウスとスウだったものはオーラで繋がっていた。

それを使いまるでデータを移すようにスウだったものからデウスはその力を抜き取り我が物とした。


「久しく忘れていたこの高揚感、悪くない」


仰向けの状態から膝を曲げること無くロープか何かで引き上げられるように起き上がるデウス。

着ていた衣装は地面に引っ掛かっていたのか破れて体だけ起き上がったその姿は、一見動きやすさを重視した格闘家の様でもあった。

腰まで伸びた青い髪がまるで下から風を当てられている様に広がりゴンザレス太郎を見る。


「まずは感謝を伝えねばなるまいな、お前のおかげで余は更なる力を得れた。礼を言う」


一言一言が重く重圧が在るかのように聞く者の体に威圧をかける。


「さて、余はこれからそこのフーカとか言う娘から幻のスキル『パンドラ』を取り出さねばならなくてね、『プロアクションマジリプレイ』が使える助手が欲しいんだがどうだい?」

「スペニの代わりにって事か?俺が協力するとでも?」

「『協力しろ』!」


その言葉と共にゴンザレス太郎の意識は消え去ったのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る