第97話 絶望は何処までも…
「光を集める…ですか?」
魔海へ向かう最中の夜営でゴンザレス太郎はこの合体魔法の本当の目的を説明していた。
「でも明るくなるだけじゃないんですか?」
「簡単に言うと夜より昼の方が暖かいでしょ?あれは太陽の光が暖めているから暖かいのは分かるよね?その光を凝縮すると火を起こせるのさ」
「でも火を起こすくらいでしたら火の魔法を使えば…」
「これくらいで火を起こせるくらいの熱を出せるんだ。だからこれがもっと大きくて遠くにあればその熱はそれこそ岩を蒸発させるよりも高いエネルギーになる」
岩を蒸発と言う想像も出来ないその言葉に二人は喉の乾きを覚える。
想像もしたことの無いそんな力を二人が扱えるのか…
そんな疑問にゴンザレス太郎は気楽に答える。
「メールさんは合図があるまで出来るだけ大きく二枚の結界を遠くに維持して、ジルさんはその間の水を漏らさないように魔法で押し止める事だけに集中してくれればいいから、後の角度とかは曲げる時に光の端と端を見て調整してしてくれればそれだけで大丈夫です。」
まるで新しい玩具の使い方を説明するように話すゴンザレス太郎に頷き二人はそれからその練習だけをひたすら繰り返すのだった…
空を飛ぶ鬼龍ドラゴンを飲み込み地上に居た鬼達のを一網打尽にする灼熱の光の柱は逃れた近くに居た鬼すらもそのあまりにも高い熱で発火し燃え上がり絶命する。
また地面の中に隠れていた触手鬼も地面の土ごと蒸発するように塵も残さず消滅していく。
フーカとサラは先程からの結界を引き続き展開し続け耐える!
直接の攻撃でなくなっただけ二人には楽になったと言えるだろう。
ジルとメールはゴンザレス太郎に言われてた通り前面に張っておいた結界で防ぐ。
元々一番距離が離れているためそれほど深刻になることもなかったのだが遥か上空に展開している合体魔法を安定させるために必要だと判断して張らせていたのだ。
そして、マコトとゴンザレス太郎は護られていた。
二人の前に立つ片足を無くした執事。
ニセバスチャンであった!
魔王に殺される瞬間にゴンザレス太郎が逃げながら目の前に出した光魔法で自分の影を伸ばしニセバスチャンはゴンザレス太郎の影の中に隠れて命拾いをしていたのだ。
そして、今二人の前でサラを有事に守るために覚えた結界障壁の魔法を使用して耐えていた。
それでもニセバスチャンの力では数秒の間しか持ちこたえられなかったがそれで十分であった。
そのニセバスチャンの後ろに地面に潜ってた触手鬼が死んで解放された魔王が回り込みニセバスチャンの結界障壁の前に闇魔法の結界を張り光そのものを飲み込むように防いだのだ。
血を吐きながら光で目を瞑ることしか出来ないマコト、真っ青な顔で最後の合図を送ったままの姿勢で動かないゴンザレス太郎…
ゴンザレス太郎の指示通り約30秒の光の柱はメールが結界の形を変えて終了する。
目の前に広がるのはクレーターではなく巨大な大穴。
全てが熱により消滅したのだ。
「ごふっ…勝ったのか…」
マコトの言葉にニセバスチャンが振り返らずに親指を立ててサムズアップする。
しかし、魔王だけは気を抜かず穴を見つめていた。
そこよりも高い場所の両手が手首まで無くなったサラを介抱しながら穴を見つめるフーカの表情が歪んでいた。
「うそ…でしょ…」
巨大な穴の中から手が出てきてそいつは這い上がってきた。
鬼王の更に進化した熱と光に耐性のある鬼王の上位種『鬼神』であった。
回りを見渡し一人動ける魔王はそいつに向かって瞬間移動のように襲い掛かる!
だが次の瞬間、その速度を見切った鬼神は魔王を手で叩き落とし、地面にめり込んだ魔王に鬼神の拳が叩き込まれる!
地面が割れ魔王は大ダメージを負いながら違う場所から飛び出すのだった。
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