第30話 いきなりのピンチも稼ぎポイント
慟哭とは酷く悲しみ声を上げて泣く事を指す。
その名の通り、ここ慟哭の洞窟は恐ろしい場所だった。
魔物は強く仕掛けられた罠も凶悪なものだったが何よりも恐ろしいのはマッピングが役に立たないと言うことだろう。
そう、この世界のダンジョンは生きているのだ。
中は常に変動しており来た道を戻るだけで違う場所に辿り着く、まさに悪夢の中に居るようだ。
その為マッピング何てものは役に立たず脱出するための方法を各々用意するのが基本である
。
「って習ったよね?」
「…はっはい!習いました!」
また近いよフーカ!?
「もぅ二人共仲良いわねぇ~」
「本当に肝の座った子供達だわ…」
ジルとメールの二人は護衛対称の二人があまりにも落ち着いているのでその雰囲気に流されて居た。
「しかしまぁ咄嗟とは言えこんな余裕なのもおかしいんだがな」
マコトのため息と共に出た言葉に反応するように結界が大きく振動し魔物の攻撃を防ぐ。
「ジルさん、風魔法で首です」
「はいよ、ウィンドウブリッド!」
弾丸の様に圧縮された風の塊がクラゲワイバーンの首を撃ち抜き一撃で仕留める。
一体何体の魔物を倒したかもう分からない、その魔物の死体を別の魔物が一斉に食べるからだ。
そして、また魔物同士で取り合いが始まる…
何故こんな事になったのか…
時は慟哭の洞窟に入って直ぐの頃に戻る…
「さぁここからは魔物の巣窟だ。罠も凶悪なものばっかりだから決して勝手な行動はしないように!」
マコトが振り返り護衛対称の二人にしっかりと言う。
だがいきなりマコトは足元にあったスイッチを押してしまい5人の足元に転移魔方陣が浮かび上がり中に入って15秒でトラップにより強制転移してしまった。
「し、しまっ…」
入り口にマコトの声が響くと共に全員の姿はその場から消失するのであった。
「ねぇ…ここって…まさか…」
メールの声に反応し全員は辺りを見回す。
そこは現代日本なら東京ドーム何個分とか言った表現をされそうな程広い空間であちこちから新しい魔方陣が浮かび上がった。
「やばい、転移石は?!」
「駄目、ここ使えないみたい!」
「くそっ」
マコトとジルは慌てた感じで会話を行う。
そして、魔方陣から次々と現れる魔物達。
そのどれもがCランクの冒険者数人で一匹を相手に出来るレベルの魔物だった。
サソリ猪にコウモリ蟹、氷狼に至ってはBランクが相手する魔物だ。
一同は絶望した。
脱出用の転移石は使用できず目の前には勝ち目の無い魔物の群れ。
そう、ここは洞窟内で最も魔物が発生する魔物の巣窟『モンスターハウス』であった。
だが、そこで1人落ち着いて回りを見渡すゴンザレス太郎は叫んだ!
「皆!あそこの壁まで移動するぞ!」
ゴンザレス太郎が1人走り出しその後をフーカが追い掛ける、仕方なく護衛する面々も渋々後を追い掛ける。
ここまで追い込まれても見捨てないのは流石プロと言えるだろう。
そして、まだ囲まれてなかった一同は壁際まで移動した。
だが、そこは逃げ場を自ら無くしたも同然の状況にマコトも背水の陣が狙いかとゴンザレス太郎の考えを読む。
一応後ろが壁なので背後を警戒しなくてもよいと考えれば悪くは無い案ではあったがそれは戦力が拮抗してればの話だ。
逃げ場の無くなった一同は物量で圧殺されるのを予想した。
だが…
「ジルさん!壁に魔法で穴を開けて下さい!」
「えっ?あっ…はい!ストーンブレイク!」
ジルの土魔法で壁に穴が開けられた。
「もっとです!もっと奥まで!」
「なんなのよもー!ストーンブレイク!ストーンブレイク!ストーンブレイク!ストーンブレイク!」
どんどん穴は奥へ広がりその中へ転がり込むように全員が入る。
「メールさん!入り口に結界を!」
そこまで言われて一同はやっと何をやっているのか気付いた。
そう、籠城戦である。
っであれば役割は決まっている!マコトは入り口を結界越しに無理矢理通ろうとした魔物を剣で突き刺す。
怯んだ敵はひしめき合った別の魔物に襲われる。
それはアマゾンのピラニアを彷彿させる光景だった。
怪我をした魔物は別の魔物の餌となりそこから獲物の取り合いで共食いが始まる。
後はその間に中を広くジルが魔法で拡げ完全な籠城が完成したのだった。
しかし、このままでは神力を使いすぎたジルは魔法を使えなくなり結界を張り続けるメールもいずれは神力が尽きて結界を張れなくなる。
だが、それもゴンザレス太郎の視線で全て片づいた。
「はぁ…仕方無いわね皆さん聞いて下さい」
フーカは3人に自分のユニークスキル『スキミング』を話した。
そして、共食いから逃げるように飛び出した魔物を指差して…
「ジルさん、頭部に雷撃魔法お願いします」
「スパークアロー!」
矢の形をした雷魔法は満身創痍で逃げようとしているキノコトカゲの頭部を一撃で撃ち抜き絶命させる。
こうして一同は現在もモンスターハウスの横穴に籠城しているのだった。
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