拡散
普通人を刺したら、辺り一面血の海になるのだろうか。古い友人はガンで死んだ。彼は死の一年前、一面血の海になった自分自身の映像を撮っていた。自分の死を撮る事で不思議な安堵感に包まれたという。そんな彼に私は憧れた。
私が刺した彼の体から血は一滴も流れなかった。まるで紙吹雪のようにマイクロフィルムが飛び散った。割れた風船から飛び出すような感じだった。
そしてフィルムは糸状に煙のようになり、空気に拡散していった。
1人の人間が持つ機密情報が全部外に漏れ出し、拡散していってしまったのである。これに私は青ざめた。もう全ておしまいだと思った。その人物を消す事で全ては終わるはずだった。しかしその人物が全てを保管していた。まるでその人物が最高のセキュリティーを持った金庫であるかのように。
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