空白の日記
Jami
1日目 自分という存在
※シンボル収集イベント『天に仇なす大猿王』のちょっとしたネタバレ含みます
【登場人物】調律の巫女一行
「やっと終わったー!」
太陽を戴く清らかな泉に、かれこれいくつ投げただろう。後半は半ば投げやりになりながら、しかし祈り(出ろ~!)は忘れず、今回の『穢れのシンボル』である『きんこじ』を投げること数回。やっとのことでお目当てのステッキと鉤爪が出た。
「これでこの想区とはおさらばだな!」
「ナイスバディ悟空さんのおかげで今回もお宝ゲットできました…ムフフ」
ナイスバディこと、アイデンティティークライシスを起こしたカオス・孫悟空の暴挙も収まり、この想区ともそろそろお別れという時である。(とりあえず最初の5回とも青は辛かった…)
「みなさんお疲れさまでした。孫悟空たちも旅を再開したみたいですし、一安心ですね」
浄化の女神も泉の底に沈むシンボルの山を見ながら優しく微笑む。きっとこの女神、アイテムの出すタイミングを調整しているな!なんて…思わない。(でも最初の…以下略)
「でも今回はちょっと感慨深いよねぇ」
泉から出てきたステッキをムフフフと握りしめていたシェインからヒョイと奪いながらファムは言った。
「ちょっと!ファムさん、勝手に取らないで下さいよ」
「んー。でもシェインちゃんは弓専門でしょー。ほら、私もシューター可だし、魔女に杖は必需品」
ムッと睨み付けるシェインにファムはニシシと笑う。ステッキに付いた魔眼がギョロりと動いた気がした。
「感慨深いって何が?」
後で銀のコインに変換される武器をまとめながらエクスはファムに問うた。
「お、少年気になるかい?」
すびっとステッキをエクスの方に向ける。魔眼と目が合う。
「……ええ。まぁ…」
ちょっと怖いんですけどー、と一歩引いてエクスは頷いた。
よかろう。とファムは含み笑いをして話し出す。
「孫悟空は西遊記という物語にいる。ということは、決められた運命があったわけだ。それも主役。なのに、何故、自分を見失い仲間の声を聞けなくなったのか。旅を終えた後のことだってちゃんと書いてあるはずでしょ…大方前と同じで運命の書なんて読んでないんだと思うけど」
孫悟空だって旅が終わったら仏になる。他の仲間と同じなのだ。なのに一人ぼっちになると思いカオスと化した。
「決められた物語だとしても何回かに一回は迷わせ、気付かせるのを目的としたお釈迦様の考えだったらまさにストーリーテラーの気まぐれ。もとい、過酷な修行でしょ。コワイコワイ」
ブルブル身体を震わせてみるファムに「早く本題を言え」とシェインから今度は鉤爪を取り上げたクロヴィスが言う。
「クロヴィスくん、事を急《せ》ぐのは悪い癖だよ。まぁ尺があるから話そう。とどのつまり、決められた運命がある人でさえ自己を見失うなら、運命の無い私たちはどうなのさってこと」
簡単に自分を見失うのか。ファムはにやにやと笑みを浮かべた。
「またえらく難しいことを言うものだな」
エイダはほうほうと頬杖をついた。
「自由に生きれる分、自分で考えて行動しない限り『ただそこにある存在』にしかならない。でも、下手に動けば…」
「…俺のようになるってか…」
「…私の時は何とかなったのだがなぁ」
モブ少年と、過去に失敗した例と、成功した例がそれぞれ嘆息をもらす。
「自分で選んでも時々惑わされるわ…ここ最近の私そうだもの…でも私は私だわ」
経験はものを言うかのごとくレイナは頷いた。その答えにファムも満足したようだ。
「お姫様も成長したね。それだけいい仲間がいるってことは喜ばしいね」
さて、そろそろ時間かな。とファムの一声で一行が立つ。旅はまだまだこれから。
「ちょっと眼鏡さん。なんか精神論的な話で誤魔化されそうでしたけど、勝手に持っていかないで下さいよ」
「ん?チビすけ鉤爪なんて使わないだろ。これは俺の物だ」
「……む。どうせ女キャラにしかコネクトできないじゃないですか(ラプンツェル)」
「………ツヴェルクがいる」
「ぷぷ。小人なんてシェインよりチビすけですよー」
「……(ムカ)」
「……まぁまぁ……シェインもクロヴィスもそこら辺にして行こ?」
1日目 終
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