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 「警察や自衛官・博物館での展示等そして公安委員会の所持許可を得た者、

に限り銃の所持が出来る。

 銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)の第3条より。





猟銃についてたたくみはほとんど知識がなかった。しかし、近くの雪にピシっと音がして穴が空いたときから、散弾銃でなくライフルで撃たれていることはわかった。

 散弾銃のほうが、大雑把に広範囲に弾が飛んでいくが、射程は極端に短い。日本で猟銃の許可を警察から取った場合、最初は、威力は大きいが射程の短い散弾銃になることになると聞いたことがある。

 たくみにとってそうとう走らないといけないことだけは、確実になった。

 この風雪、暗闇の中、狙えるものなのだろうか、、。

 巧は逃げる方向を変えるべきか考えたが、山下家の屋敷の周りをメリーゴーランドのようにウロウロ回るのだけは、なんとしても避けたい。

 距離だ、距離だ。それしか、勝ち目はない。

 巧は中学生のブーツをハイヒール状態で履きくにゃくにゃ走りながら、リフトのところまでやってきた。

 灯りは一切ない。そして当然リフトは動いていない。リフトの動かし方がわからない。

 が、至る所のスイッチというスイッチを全てオンにしていく。

 発電機が嫌がりながらもブルーンと動き、リフトが軋み動き出した。

 一瞬、ゲレンデの下の山下家の屋敷の方を見る、黒い大男の影が長い棒のようなものを持ってこちらに駆けている。山下家は、暗闇の中唯一ほうぼうに灯りが入り、家族総出の臨戦態勢に入っていることがわかる。軽トラでゲレンデを駆け上ってくるかとも思っていたが、さすがにこの斜面を650ccでチェーンで昇るのは無理らしい。

 すぐに巧は動き出したリフトに飛び乗った。


 しかし、これが、重大な間違いであったことにすぐ気付いた。このリフトの座席に座っていたのでは、銃弾を避けられない。そして、リフトの乗り場に和夫が到着するとリフトを停止させるだろう。

 しかし、このくにゃくにゃなっている継映のブーツでゲレンデを駆け上っているよりは、機械の力で銃弾の的になりながらリフトで登っている方が、チャンスがあるかもしれないとも思った。

 ケシのせいだろうか思考だけがグルグル回り、現実感がない。

 バーンという銃声の後、パキーン。

 銃弾が、リフトの上部の何処かにあたった。

 あの男はこの風雪と暗闇の中、狙えるのか。

 巧は少しでも、的を小さくするため、ガラケーのように腰を折り、咲香栄さかえを抱きすくめたまま、小さくなった。

 いや、小さくなったつもりだけだった。実際はそれほどでもない。

 ひゅん。そのあと、バーンという銃声。

 銃弾が、外れて飛んでいった音が聞こえた。音の速度と銃弾の速さの関係など一切分からないが、銃声が遅れて聞こえてくる。リフトは小さく屈んだ巧を軋みながら運んでいく。

 ごとんごとん。

 風雪で耳も千切れそうに痛い。鼻も痛い。手で鼻を覆う。息をするのが辛い。

 咲香栄さかえすねの前に持ってくると、和夫に晒す面積が小さくなることに気づくが、そんなこと出来るわけがない。ウェアを脱ぐなんて持ってのほかだ。

 ひゅん。

 また、銃弾がれてバーンという銃声。同じひゅんでも近い遠いが判別できるようになった。

 しかし、そんなことできるようになりたくなかった。

 突然、リフトがとまった。

 違う、和夫が下のリフト小屋にたどり着きリフトを止めたのだ。

 巧は、幼子をともに、リフトの座席で宙吊りになっている。

 今、位置はどのへんだ?。正面を見、振り返り、後ろを見る。リフトは二段階になっていて、まだ下のリフト、しかし、かなり進んでいて、4/5進んだ感じだ。

 ひゅん、バーン。ひゅん、バーン。キーンリフトのワイヤーに当たったようだ。バーン。

 意固地になったいるのか、和夫の発射の間隔が狭まってきている。

 どうする?。

 このままでは、文字通り、射的の的だ。このリフト座席は地表からどれくらいの高さなのか?。

 ひゅん、今まで一番近い、ひゅんだ。大きなひゅん。そして銃声バーン。

 うん、弾が切れたか、長い、沈黙。耳を切るような風雪の音しかしない。

 そう思ったら、リフトが軋む音がしだした。巧は天が、神が助けてくれたと思った。

 違った。

 和夫がリフトの進行方向をリバースに入れたのだ。

 リフトは、戻っている。

 リフトは進んでいる和夫の居る方へ、山下屋敷の方へ。

 もう逡巡している暇はなかった。どうせ、切り取られる運命にあった足なのだ、折れるぐらいちょん切られるよりマシだ。

 たくみ咲香栄さかえを腕に抱き、リフトの座席から暗黒の地面へ向けて飛び降りた。

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