第40話 正座のあとの痺れってつらいよ
「くっ……和哉……コレ使えっ!!」
ミカゲが、右手に持っていたアイスソードを俺に投げて、それを受け取る。そして俺は、たけのヤリの残骸に苦戦しているバジリスクに向かってゆっくりと、
「面、胴、小手ぇぇええええっ!!!」
……最後まで戦っていたかったよ、相棒。
その相棒への未練を断ち切るように、俺は、たけのヤリごとバジリスクを一刀両断にする。そして、カラン、と乾いた音を立てて、咲ちゃんのお面が落ちた。
「マ、ママぁ……」
バジリスクのコスプレが解け、フリフリの可愛らしい洋服に身を包んだ咲ちゃんは、廊下にいるママのところへ駆けていった。
そんな咲ちゃんを、母親は優しく抱きとめていた。
ミカゲを見るとバジリスクを倒したのに、まだ左腕が石化している。
あかねんがキュアとかヒールとかを唱えるものの、腕の石化は溶けない。
「ミカゲ、大丈夫か?」
「あぁ、腕が痺れてるから、ちょっとぐおおお! ってくるけど、大丈夫だ……」
とはいえ、ミカゲの顔色は白くて、若干、冷や汗もかいているようだ。
「そりゃそうだろ、正座を1時間ぐらいして立ち上がったうえに、その足をツンツンされるとなったら、ひでーもんだぜ。そんな感じの痛みがよぉ、左腕にずっとあるからすげぇ嫌な気分なんだ。はやくどうにかしてくれよ……
ミカゲに懇願されるものの……だけど、これ、どうやったら治るんだ?
左腕をコンクリートで固めたような状態のミカゲ。そこに母親に抱きしめられていた咲ちゃんが気づいた様子で駆け寄って来て、
「おにいさん、ごめんなさい」
と軽くミカゲの左腕に触れた。咲ちゃんが触った瞬間、ぐおおおおお! って叫んでたミカゲの左腕が、みるみるうちに治っていく。
そのあとあかねんに左腕を触られていたけど、ミカゲはやはりまだぐおおおしていた。
「いてぇ! 痺れまだ取れてねーんだから、おめーら触んな!」
ミカゲが落ち着いた後、俺たちは居間にいた。
あかねんは、タローが運んできたいもざえもんにメガヒールを唱え続けている。
そして、目の前のテーブルには、咲ちゃんの父親のフィギュアが置いてある。
「いや! パパ悪いことしたんだもん。反省するまでこのままっ!」
俺たち、というか主に咲ちゃんの母親が、父親を元に戻すように咲ちゃんを説得している。なんでも咲ちゃんがもとに戻さないかぎり、完全にフィギュア化してしまった父親の石化は解除されないらしい。
高さ30cmほどのフィギュア父なのだが、解けたらもとに戻るのかなぁ。
そして多分、咲ちゃんがどうやら父親を元に戻すのを嫌がるのは、元に戻したら両親が喧嘩するんじゃないかと心配してのことだと思う。
「咲、わがまま言ってないで、お願い」
母親が懇願するも、首を横にふる咲ちゃん。
どうやら両親の仲が悪くなるより、このままにしたほうが平穏な生活を送れると、咲ちゃんは子供心に思っているようだ。
「……咲ちゃん、ボクの最後のお願いいも。お父さんを元に戻していも……」
メガヒールで若干回復して、起き上がるだけのいもざえもんが、咲ちゃんを優しく諭す。そして最後、という言葉をしっかりと聞き取ったタローは、いもざえもんのその言葉を聞いてものすごく号泣している。
「……うん、わかった。大好きだよ! いもざえもん!」
しばらく迷っていたものの、いもざえもんの言葉に咲ちゃんは頷いた。
……さすがゆるキャラだぜ!
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