第10話 カードはやっぱり昭和堂
ステータス画面を見ても、刻一刻と変わっているわけではなさそうだ。
さきほど俺が上着を脱いでも、ずっとリクルートスーツ(汚れ)のままだったし。
「あの、ステータス画面やカメラアプリのレスポンスってどういうもんですか? 装備品が変わったらすぐに対応してくれるんですよね?」
俺はおねえさんに質問する。
アプリをいじっている間、手持ち無沙汰だったのか、おねえさんはタロットカードを箱にしまっているところだった。
外箱には昭和堂、1,980円と値札が貼られたままであった。
ちなみに昭和堂とは、田舎村に唯一ある本屋である。
「あ……コホン。いいわ、答えましょう。レスポンスはわりと遅めね。なぜなら、うちの情報室の職員が村民からの情報をもらって、それを更新するの。だから8時半から17時まではしっかり情報室の職員が常駐しているからそこそこ速いけど、それ以外は次の日に出勤してから更新になるわ。でも安心して? 時間外に活動した分は、村民が貴方たちの行動を見て、逐一メールで報告してくれるのよ。だからそれまでに送られてきたメールで情報を入力するから、ちゃんと強くなるわ」
うう、つ、使えねぇ!!
スマホを使ってるから、即時に自動更新とかなにかあるのかなぁ、と思ったら、裏方で手作業かよっ!
……想像以上にアナログだった。
「わ、わかりました。っていうか……使えねぇ」
つい、本音を漏らしてしまった。
あかねんも俺と同じ気持ちのようだ。
……タローはまあ、置いとこう。なにも確認出来てなくてかわいそうだし。ガラケーだし。
「あ、あのぅ。モンスターとかって出るんですよね。異世界だし」
タローが気を取り直して質問する。
俺は異世界じゃねーよ、と思っていたので、まったく考えていないところだった。
どっちかというと会話して情報を集めて、モンスターさんと戦いごっこをし、魔王を特定して討ち入ればいいことなのかな、と思っていたのだった。
「……いいわ、答えましょう。モンスターはいるわ。先程説明した耳鳴りになった人間がモンスターになるの。モンスターの強さについては一目みて判るようになっているわよ。便利でしょ。……でも最近、ここの村には得体の知れないものが、出るようになってきているわ。気をつけなさい」
まだ城……にいる状態だから、モンスターは出てこないのか。
いやでも、モンスターも耳鳴りが終われば、普通の人間じゃないのか?
モンスターは遠慮なくコロコロしちゃえばいいのかと思い、俺は質問することにした。
「ええと、モンスターを殺すってことですよね?」
「いいわ、答えましょう。モンスターをマジで殺したら刑務所行きよ? 気をつけなさい。モンスターは殺すものじゃなくて、攻撃してこなくなれば経験値は入るわ。気絶させてもいいし、失意させてもいいわよ。とにかくモンスターになった人間はあなた達を襲うわ」
うん、それは耳鳴りが俺たちのせいだと勘違いしてくるんですね、わかります。
……ん? 得体の知れないもの?
「その得体の知れないものってなんすか?」
「いいわ、答えましょう。勇者には早く魔王を倒してほしいの。でないと呪いの他に本物のモンスターが出てくる、とカードが予言したわ。そのあたりの具体的な話はヨネばあちゃんが知っているから、そちらに聞いてみるといいわよ」
ヨネばあちゃんか。まずは目的が出来たな。
「これでチュートリアルは終了よ。お疲れ様。これはチュートリアル全クリアであげるプレゼント」
とおねえさんは会議室の長机にぽんっと巾着袋を載せた。和柄でシックな巾着である。
中には牛乳瓶のフタが30枚ほど入っていた。
一枚取り出すとそこには1ゴールドと手書きで書いてあった。
おおおおい! ここは幼稚園かよ!
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