ハイアシンス
ヴァン=ガルム
序章 [野良猫と仮面]
第1話[黒尾の白猫]
ここは、とあるアジアの島国。
その中で無法地帯として最大の大きさを誇る区画、通称第23区。
かつて起きた火星と地球の第一次星間戦争によって地球各地は放射能で汚染され大地は幾つかが消滅していた。
復興こそ行われたものの以前の姿に修復された首都と修復が行われず難民と現地の人々の入り乱れる廃虚群の差は戦争の傷痕を未だに根強く残している。
「…ってわけで私達はこんな所に住んでるわけ、わかった?お姉ちゃん。」
「ん…ん~、なんとなく…かな。」
黒い尻尾の生えた白い短髪の蒼い瞳の少女は困り顔で黒い長髪の紅の瞳の少女に答える。
白髪の少女の名はニーナ・ハイアシンス、妹の黒髪の少女ナナと山奥に建てた小さな家に住んでいる。
「お姉ちゃん、顔にわからないって書いてあるよ。」
図星を突かれ目をそらす、姉という立場でありながら本などは読まず教育も受けていない彼女には先程の解説は理解が追い付かなかったのだ。
「そ、そんなことないと、思うかなー…」
ジトー
疑う目付きをしながら彼女は問いかける
「じゃあ 私 に、説明してみてよ。」
「え…えぇ…」
「簡単でいいよ、ほら。」
「あー、そ、その。」
…
大事な妹の無邪気な顔を見ると嘘をついたことに対し少女は僅かに罪悪感を覚えてしまう。
しばしの無言
静かなわけではなく、ニーナはあわてふためいておりぶつぶつ独り言が静かな部屋に響く。
そしてどうにか足りない頭で考えた言葉を出す。
「…傷痕が、酷い…みたいな」
「…」
「…ま、待って今の無し!無しよ!」
「はぁ、確かに戦争の傷痕は酷いらしいけど、ちゃんと聞いてないのバレバレだよ。」
姉のダメっぷりに呆れ思わず口からため息を吐いてしまう。
ニーナは僅かにショックを受け涙目でどうにか言い訳をする。
「うぅ…べ、別に知ってなくても困らないし…」
「もう…”黒尾の白猫”の名前が泣くよ、お姉ちゃん。」
「勝手に呼ばれてるだけよ。」
そう彼女は殺し屋、通称”黒尾の白猫”として有名なのである、本人は知った時は若干興奮していたそうである。
「かっこいい名前で呼ばれてるよー! とかはしゃいでたのに~」ニヤニヤ
「う、うるさいわね!それならナナだって…」
ピピピ ピピピ
タイマーの音が鳴り響く
「あーそろそろ時間ね。」
「…今回はどんな人を殺すの?」
「私と同じ、殺し屋、なんか狙ってきてるらしいから先手を打つっておやっさんと無頼が」
「ふぅーん…」
「あっ、お姉ちゃん、お昼ごはんまだいいの?お姉ちゃん寝てた時にもう出来てるけど。」
そう聞いて彼女はよく見てみると炊飯器とツナ缶が置いてあるのを確認した。
ツナ缶はニーナの昔からの大好物である。
「…今すぐ食べたい…けど、待った分美味しく食べれそう…」ジュル
「…お、お姉ちゃん、その…」
「帰ってきたら絶対食べる!」
よだれを垂らしながらキメ顔で彼女は玄関を開けて出ていった。
__________________
路地裏にてニーナは壁際から外を見渡し目標を探す
「さーて…」
(仮面の男…だったわね、えーと居るかしら…)
そうして探しているとドクロとも言い難い仮面をした青いローブに身を包んだ男らしき人物が彼女の瞳に映る、
(あれね…デカっ…!)
身長約170cmはありそうなその仮面男がニーナのいる路地裏を横切ろうとしたその時。
「ちょっとそこのお兄さ~ん」
「む?」
「私と、ちょっと楽しいことしない?」
(ふふふどうよこの私のこの尻尾と耳、胸はないけどこれなら多少釣れることは既に証明ずみよ!)
ニーナは尻尾と猫耳を可愛らしく振りながらスカートをたくし上げ派手な下着で相手を誘い込み自前のサプレッサー付きのSIG P226で仕留めるのが得意技の殺し屋なのだ。
ニーナの猫要素に引かれ命を落とした人は少なくないと言われている…
「…いいだろう」
「そうこなくっちゃ~、さあこっちこっち~」
そう言い裏路地の奥へと進み行き止まりにたどり着くとニーナはスカートに手をかけ外しながら
「それじゃ…このへんで…」
ニーナの羽織っているパーカーの裏にしまってある拳銃は宙に浮き暗く見えない所を進みながら相手の後ろで止まった。
そう彼女には不思議な力がある、広く念動力と言われる力に近いそれは手を使わず物を動かせる、これを用いてニーナは多くの獲物を刈り取ってきたのだ。
(これで…)
「…ほおう、これが君のスタイルか。」
「っ!?」
キシュシュシュシュシュ
改造を施されたニーナの拳銃はフルオートで9mm弾を相手に浴びせニーナは素早くもう一丁の拳銃を取り出し応戦体制へと移った。
拳銃の弾倉は一瞬で尽き薬莢が転がる音が鳴り響く。
「…やったの?」
そう思ったのは一瞬、多数の銃弾を受けた男はチェーンソーを取り出しニーナに物凄いスピードで迫ってきた。
ギイィィィィィィンン!!
銃の表面を電撃を帯びたチェーンソーの刃が熱しながら削っていく。
(まさか受けるとはな、だがこの程度ならば)
男はそう思っていた。
男は左下にあったこちらを向いている大型拳銃を見た。
(45口径の!!)
が回避は間に合わない。
バァン! ガギィン!
45口径の弾丸は仮面を直撃したが強靭な仮面は銃弾を弾き飛ばした、当たった衝撃音にうなされる中微かに舌打ちが聞こえた。
正面を見ると赤い瞳に変わった少女が高速で壁を蹴って背後を取る動きをしていた。
再び放たれる9mmの弾丸、しかしそのどれもが男に致命傷を与える事はなかった。
先程撃ってきた45口径の拳銃は彼女の手元へと飛んで行く。
「…9mmはクソね…」
「最近は出番なかったけど、久しぶりに楽しめそうね…」
「何を…!?」
手に持っていたP226を投げつけ、パーカーの内側からもう一つのガバメントを取り出し、凄まじい速度で距離を詰めてくる。
すかさず男はチェーンソーで止めようとするが銃で受けられる。
蒼い電撃と甲高い駆動音が響く。
ニーナは受けたのとは逆の銃でチェーンソーに銃弾を打ち込むがすぐさまもう一本のチェーンソーが迫る、銃弾を打ち込み勢いを殺しながら銃で受けるが一瞬で表面は削り落とされ拳銃は無残にも切り裂かれ電撃をまとった刃は少女へと迫る、が受けている銃を無理矢理打ちながらこれを回避。
ニーナは隠し玉の大型自動拳銃デザートイーグルを取り出しながら片手の銃を念動力を使いマガジンを交換しリロードを終える。
「まさかこれを使わせる相手に出会えるとは思わなかったわ…」
すぐさま反撃と言わんばかりにチェーンソーの一撃が壁をえぐっていくが少女の顔には動揺も焦りもなかった、むしろ強敵との戦闘を楽しむように笑みを浮かべていた。
倒れこむように避けたニーナはそのままデザートイーグルを撃ち込みながら崩れた姿勢を戻しながら距離を離す。
しかし放った銃弾は盾として使われたチェーンソーに吸われ相手の武器を破壊したが片手のチェーンソーの電撃が飛びニーナへと向かっていく…が。
バチィ!
電撃は弾くように明後日へと飛んで行く。
驚愕の動作を見せる男に対し少女は笑みを浮かべた。
その後数十分以上に渡る攻防が繰り返され…
ゴトッ!
デザートイーグルの鈍重なマガジンが地面に落ちる、お互いに決定打はなくただただ消耗戦が続いていた。
しかし。
ぐぅ~
空腹音が路地裏に響く、少女は少しばかり恥ずかしく思うかのように目をそらすとゆっくり目を閉じハッとしたように目を開けると状況を確認するかのように蒼い瞳を左右に動かし周りを軽く見た後だらけるようにして。
「おなかすいた…」
「…は?」
スカートを履いていない下着丸出しの少女の突然の発言に男は困惑しているが、少女は慌ててスカートを回収し着こなしながら銃をしまいマガジンや投げ捨てた拳銃などを念動力で手慣れたように回収しながら少女は言葉を続ける。
「…なんかお互いに決め手もないみたいだし、休憩~…みたいな」
「…は、はははは!」
男は思わず笑う、先程まで殺しあっていた少女が腹を空かせてちょっと遊んだ後の子供のように接してくるのだ。
「な、なに笑ってるのよ」
「はははっ…すまない、もう、笑うしかない感じでな…」
「ん…変なの…」
そっけない対応をするの少女は軽く伸びをし路地裏から出ようと足を進めた。
「じゃあ私帰るから」
「待て!」
男は声を上げ少女の後ろへと立ち言葉を続けようとするが、先に少女が疑問を投げ掛ける。
「なに?」
「ここまでの者を俺は見たことがない、敬意を込めて、姐さんと呼ばせてくれ!」
「…うん?、まあ、別にいいけど…」
「やった!では俺も腹が減って一文無しなので付いていってもよいでしょうか?」
「何よ急に…馴れ馴れしいわね…」
少女は何時でも銃を取り出せるように警戒しながら思考を巡らせる。
(こいつ私を狙って送られたハズよね…でも何かしでかしてもナナならすぐに始末出きるし…)
「…変なことしたら撃つわよ」
そう言うとすたすたと少女は足を運ぶ。
男はその後ろを追いかける。
廃墟街を抜けしばらく歩いているとふとした疑問が浮かび少女は振り向かず歩きながら問いかけた
「ところであんた名前は?」
「…ハイドフェイスと皆からは呼ばれている」
「そう、じゃあ…変な仮面って呼ぶわ」
「なんで名前聞いたんですか…」
「気になっただけ」
「えぇ…」
男と少女は特に会話もなく山道を進んでいく
____________________
どこかの一室にて、ヘッドマウントディスプレイのような仮面を被った白い長髪の女性と研究員らしき男が一つの画面を凝視していた。
「失敗作にしてはよく戦いますね、しかしあの男、大金で雇ったというのに裏切るとは…」
「毒をもって毒を制する…か」
「は?」
「いまいる子達を使って始末する、義手のあの子は彼女に恨みを持っているようだし丁度いいわ。」
「…ああいつらを使うなんて…わ、わかりました社長…すぐ手配してきます。」
研究員は足早に部屋を出ていく、女性は仮面の奥に獲物を逃さぬ瞳を宿しながら言葉をこぼす。
「撒いた種は、刈り取らなければね…」
彼女が見つめる画面には白髪の黒い尻尾の生えた少女が映っていた。
to be continued…
____________________
<登場人物紹介>
・ニーナ・ハイアシンス
白髪の短めな髪型の少女、右のもみあげにナナとお揃いのヘアピンを付けている
黒い尻尾が特徴で出会って生き残った人間がほぼおらず黒尾の白猫の異名で恐れられている、妹をとても大事にしており人殺しに躊躇いは無く戦闘時は別人のように豹変する。
大口径拳銃を好んで使う。
・ナナ・ハイアシンス
ニーナの妹、黒い長髪と赤いマフラーが特徴的。
廃墟住みでは珍しく比較的おっとり気味な性格だが傭兵として非常に有名。
その必中の弾丸から魔弾の射手になぞらえて魔弾の黒猫と呼ばれている。
自分を気遣う姉を多少心配しているらしい、狙撃銃を好んで使うが左利き用が少なく困っている。
・ハイドフェイス
ニーナへ送られた殺し屋、突然変異の虫に似せた仮面を被っている。
非常に強靭な肉体を持っており人間ではないとさえ噂される、仮面の下を知る者は居ないらしい。
自身の過去から他人を不幸にしたくない想いがあるが正反対の殺ししか出来ない自分に疑問を抱いているようだ。
・レイナ(社長)
ニーナを追う謎の女性、仮面で顔を隠している。
下手な殺し屋や傭兵以上の実力を持っている噂があるらしいが自身の部屋から出る事が少なくただの研究員達の噂話である。
考えが読めないので接しやすいと言う人間は少ない。
<用語解説>
第一次星間戦争
・火星の宣戦布告から始まった大戦争、地球の各地はこの戦争の影響を強く残している。
念動力
・ニーナやナナの持つ能力、通称 力 物体を自在に動かす事が出来るが多ければ多いほど脳に負荷がかかる。
あとがき
やっと書けたうちの子のお話。
取り敢えず文章力低いが頑張って書いていきたいのでご指摘や改善点は是非とも頂きたい。
どうしよ何書こう。
まず時代設定でも
2046年の1月8日ぐらい(適当)
戦争が起こったのは2030年でもう10年以上経ってる、が復興は進まず。
まあどうしてそんなに復興が遅いかについてはそれぐらい戦争が酷かった、ということで。
まあこんな感じで適当にあとがきに書いていくか。
取り敢えず次回予告でも
ででで~♪
謎の仮面男ハイドフェイスと出会った少女ニーナ、ハイドフェイスには構わずいつも通りの朝を迎えるがそこに新たな刺客にハイドフェイスの親しい人物
さらに…謎の少女が…!
次回! [風のような少女]
お楽しみに!
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