英雄に英雄視される英雄譚

粉雪

第1話 プロローグ

私の名前はスクルド、美しいと有名な三女神の末っ子です。


私は最近、あせっています。


同年代の女神がどんどんと結婚を決めているのです。


まだ早いと思っていてもどうしても焦ってしまいます。


知っていますか? 男神はろくなのがいないのですよ。


なんといっても浮気性! もうなんでもありの道徳感ゼロなヤツばっかり。


贅沢ぜいたくは言っていられませんが、誰でも良いわけではないのです。


婚活にも疲れてきたときになんと、人間界で読んだ本にヒントがありました。


良い男神がいないなら、私が育てれば良いのです。


さいわい神様の仕事に、選ばれた人間に試練を課して神に至る修行をさせるというのがあります。


そう、好みのタイプの人間を神様に育て上げたら良いのです。


未来をつかさどる私には将来どんな男になるのかがなんとなく分かります。


私って天才ですね!


さっそく好みの子に試練をしましょう。


神様に至る試練しれんですからとびっきりのを。


そうですね…… どうせなら異世界での試練は如何いかがでしょうか?


可愛い子には旅をさせろと言いますからね。


でも試練がきつ過ぎて死なれては困ります。何か祝福を与えましょう。


なになに、集中力がないのが悩みですか、それではすごい集中力をさずけましょう。


ではでは行ってらっしゃい。


良い男に育ってくださいね。


私の光源氏計画のために頑張ってください。


――― 主神、オーディン様に見つかりました。


すごく怒られました。怖かったです。


えっ、お仕置しおき? か、勘弁かんべんしてください……




◇◆◇◆◇◆


僕の名前は青木龍也あおきたつや


今年で13歳、中学2年生になりました。


クラスでは運動も成績もいまいちの目立たない存在です。


特に集中力がないのが悩みで、医者からは軽度の発達障害だと言われています。


夏休みの最終日に残った宿題と格闘していると、突然ガラスが割れたかの様に風景が落ちて行き、何もない真っ白な世界になりました。


目の前に大きな存在が居るような感じがしますがよく見えません。


その大きな存在は僕に向かって何かを言っているようです。


でも僕には20~30人が一斉に話しかけてきたような状態で内容がまったく理解できません。


しばらくすると話が終わり、映画を逆回転させたかのように風景が戻っていきます。


最後になんとか聞き取れた言葉が「――― 光源氏計画……」


嫌な予感がしました。

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