元生徒
彼女が塾に一年ほど通った頃に、彼女は少し遠くに引っ越すことになった。
その時にはある程度先生として彼女と親しくなっていた僕は、最後だからと彼女の友達(同じ学校の同じクラスで同じ塾生の子)と一緒に自転車で彼女の家の前まで行き、またねとお別れのあいさつをした。
彼女はずっと下を向いたまま黙っていた。だから僕もどうすればいいかわからなくて、しばらく黙ってしまった。時間も遅かったし、誰かが動かなければずっとそのままだったので僕はもう一度お別れのあいさつをしてから彼女と彼女の友達に背を向けて自転車のペダルをこいだ。少しさびしさを感じた。
それから彼女は元生徒として時々塾に遊びに顔を出すようになった。友達に会いに来たのもあるし、塾長を好きだったのもあるし、僕に先生として好意を持ってくれていたのもあり、彼女が来ると分かった時には塾長から連絡が来た。せっかく来てくれたのだからと授業がない時でも僕は塾へ彼女に会いに行った。
引っ越してからの彼女は物静かだった性格からとても元気な性格に変わっていた。僕は初めビックリしたが、僕のことを見る目や根本的なところは変わってなかったので徐々に気にしなくなっていった。ただ人ってこんなに性格が変わるものなのかとは思った。
それから会うたびに彼女は僕のことが好きだと言うようになった。でも僕はまさか異性として好意を持ってくれているなんて思ってもいなかった。だって本当に好きなら普通そんな口に出して言えるようなものだなんて思わなかったから。
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