一樹とあかり

とあるアパートのエントランスに二人の男が立っている。


一人が呼び出し音を押す


あかり「はーい」


一樹「あの、ぼく」


あかり「あ、私大丈夫です」


一樹「いや、僕だって」


あかり「・・かずき!?」


一樹「そう」


あかり「詐欺師かと思った!えっ、どうしたの急に!?」


一樹「いや詐欺師って。ペンギン調査団が今日来るって聞いてたろ」


あかり「えっ、かずきってペンギン調査団なの!?」


一樹「まぁ」


あかり「今開けるから待って」


自動ドアが開く


2人はあかりの部屋の前まで


ピンポーン


ガチャ


一樹「・・・」


あかり「・・・」


一樹「や、やぁ」


あかり「ふふっ、なにやぁって」


一樹「やぁはやぁだろ。おまえこそ、なんで泣いてんだよ」


あかり「泣いてないし。目にゴミが入っただけだし」


一樹「意味分かんね。元気?」


あかり「元気」


一樹「・・あ、この人は僕のパートナーの岬さん」


岬「初めまして。岬です」


あかり「初めまして。寺田あかりです」


一樹「あの、上がっていいかな?」


あかり「あ、うん、いいよ」


一樹・岬「おじゃまします」


一樹「!?("ペンギン"だ、、、)」


あかり「今お茶入れますね。適当に座ってください」


岬「ありがとうございます」


一樹「岬さん、"ペンギン"です」


岬「うん、わかってる」


あかり「ジョージョを見に来たんでしょ?」


かずき「ジョージョ?この"ペンギン"のこと?」


あかり「そう!その子ジョージョっていうの」


一樹「(マジか、そしたら全員ジョージョじゃねぇか)こんにちは」


ジョージョ「ジョージョ!」


一樹「(マジか)」


あかり「どうぞ」


岬「ありがとうございます。いい香りですね」


あかり「ジャスミンティーです。あれ、斎藤さんは?」


一樹「ありがとうございます」


あかり「どういたしまして。でもビックリした。まさかかずきがペンギン調査団なんて」


かずき「まぁ、僕も選ばれた時はビックリしたけど」


あかり「それで、何が聞きたいんですか?」


一樹「いや、まずなんで"ペンギン"飼ってんだよ」


あかり「いいじゃん」


一樹「いやよくねぇよ」


あかり「なんで?」


一樹「(これこのまま続けても意味ないな)まぁいいや。これから色々聞くけどいい?」


あかり「どうぞ」


一樹「えー、ジョージョ君とはどこで出会ったの?」


あかり「この近くの土手沿いだよ。もう一匹いたんだけどね。二匹とも停止してたの」


かずき「停止?もう一体いたの?そのもう一体はどこいったの?」


あかり「ワープした」


一樹「ワープ!?」


あかり「ワープ。ジョージョが見ちゃダメだって言うから見てないけどね」


一樹「岬さん」


岬「うん」


一樹「ワープってことはどこかに行ったってことだよね?」


あかり「そう。たぶん宇宙船じゃない?」


一樹「宇宙船ってなんでわかるの?」


あかり「え、ワープしたら宇宙船じゃない?」


一樹「(あぁ、こいつこうゆうとこあるんだった)まぁいいや。じゃああかりは今×○町にいる"ペンギン"たちはその宇宙船からワープしてこの町に来たって思ってるわけ?」


あかり「そうじゃないの?」


一樹「いや、僕が聞いてるんだけど」


あかり「知らない。私はそう思ってるってこと」


一樹「この子に聞いた?」


あかり「ジョージョは教えてくれないよ」


一樹「でもさ、僕らが確認した限り宇宙船なんて地球の周りになんかなかったよ」


あかり「じゃあもっと遠くにあるんじゃない?」


一樹「んー、一応調べられる距離まで調べたけど」


あかり「あ、わかった!たぶん感知できないようになってるんじゃない?」


岬「それはありえますね」


あかり「ですよね!ほら!」


一樹「いや、勝負してるわけじゃないから(あぁそうだ、こいつこんなやつだ)。あかりは彼がロボットだってわかってるの?」


あかり「うんわかってるよ。充電するし、くっつくし」


一樹「くっつくの?」


あかり「くっつくよ。"ペンギン"同士で。おもしろいよ」


岬「たぶん電磁石みたいなものじゃないかな」


一樹「たぶんそうですね。そのもう一体はそれから見てないの?」


あかり「見てないなぁ。私がお水かけて壊しちゃったからまだ修理中なんじゃないかな」


一樹「・・そうか。今までそのワープしたRe-7の行方を調査団で探してたんだけど、もしその宇宙船に送られたんだとしたら見つかるわけないな」


岬「寺田さん、彼は普段何をしているんですか?」


あかり「いつも朝から×○町を偵察してるみたいですよ。ときどき一緒にカフェに行ったり、サイクリングしたりもしてます」


岬「は何か食べますか?」


あかり「食べます。ジョージョはくるくるボーゼリーが好きなんです。でも食べなくても大丈夫みたいですけど」


一樹「本当に食べるのか。すごいな」


あかり「ジョージョは最近やっとコーヒーが飲めるようになったの。それまではすごく苦そうにしてたけど」


一樹「味が分かるのか」


あかり「わかるみたいね」


一樹「もうすごい以外の言葉が出てこないな」


岬「味覚の制限はありますか?」


あかり「ん~、私の料理もいつもおいしそうに食べてるので制限みたいなものはないと思います」


一樹「ちょっと彼のこと少し見てもいい?」


あかり「いいよ」


一樹「じゃあ、岬さんあとお願いします」


岬「うん、わかった。あかりさん、私からもう少しお話を伺ってもよろしいでしょうか?」


あかり「はい」


一樹はジョージョに近寄る


一樹「(何回見てもペンギンそっくりだな。毛並みなんか絶対分からないな)」


ジョージョ「ジョ」


一樹「あ、ごめんごめん。ちょっと触ってもいいかな?」


ジョージョ「ジョージョ!」


一樹「お、ありがとう。んー、やっぱりカラダは少し固いな。ちょっと口を開けてもらえるかな?」


ジョージョ「ジョ~」


一樹「そうそう、あ~ん」


ジョージョ「ジョ~」


一樹「・・なるほど。ありがとう。今度は手を見せて」


ジョージョ「ジョージョ」


一樹「(よく見るとペンギンのフリッパーと少し違うな。たぶん細かい作業をある程度できるようになってるのか。でもそれだけじゃなさそうだな、、)」


岬「斎藤君、話はもう終わったよ」


一樹「あ、はい」


岬「また来てもいいそうだ」


あかり「ふふっ」


一樹「そうですか。じゃあ今日はこのへんで」


岬「それでは寺田さん、今日はありがとうございました」


あかり「いえ、お話しできて楽しかったです。またいつでもどうぞ」


一樹「じゃ、また」


あかり「おうっ、元気でな!」


一樹「なんだよそれ」


あかり「ふふっ」


ガチャ





岬「斎藤くん、久々に元カノに会って緊張した?」


一樹「いえ、緊張はしないですけど、ただなんか色々思い出しました」


岬「そっか。斎藤くん変わったよね」


一樹「そうですか?」


岬「うん。この後ラーメン行く?」


一樹「おっ、いいですね」


岬「今日は僕がおごるよ」


一樹「え、いいんですか?」


岬「今日はおごりたいんだ」


一樹「じゃあお言葉に甘えて笑」

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