第2話

 甘木先輩との話を終えて、一人学園の中を歩いていたら、夢果に出会う。


「先輩はなんて言ってたの?」なんて夢果は訊く。


「さっさと決めろって」


「何を?」


「〈大罪セブン〉に入るかどうか」


「そう」


 素っ気なく夢果は呼応した。


「なあ、夢果。お前は知っていたのか。俺のこと」


「何のこと?」


「だから、俺がサタンの悪魔憑きだってこと」


「知ってたけど」


「さらっと言うな」


「だって、夜刀に憑いているのはあくまでアバドンで、ただその本質がサタンってだけじゃん。夜刀はアバドンでありサタン。というか、夜刀が何に憑かれていようと、今、目の前にいるあなたが夜刀であればわたしはそれでいい」


「そりゃあ、ありがと」


 なんか照れくさいんですけど……。


「で」と夢果が言う。「どうするの? 入るの? 〈大罪セブン〉」


「迷ってる」


「でも、さっさと決めないといけないんでしょ」


「そうなんだけど……」


「何が不安なの?」


「だって、面倒臭そうじゃん。政府の諮問機関とか」


「まあ、言ってしまえば天空集住地の中枢だからね。それはまあ大変だと思うよ。けど、甘木先輩にできてることなんだから、夜刀にもできるんじゃない」


「そうか?」


「そうだよ」


「うーん」


「まあ、最終的に決めるのは夜刀だから。わたしは何も言わないよ」


 夢果は別に後押しするわけではなかった。結局、決めるのは俺だ。だってこれは俺の問題だから。


「そうだ」と何かを思い出したように夢果は口を開く。「椿姫ちゃんの所に行きなよ。たぶんまだ病院にいると思う。検査が残ってるとかなんとか」


「ああ。灰ヶ峰、どうだった」


「いや、普通に元気だったよ」


「ならいいけど」


 放課後になったら見舞いに行ってやるか。


 俺は放課後の予定を決めて、残りの授業を消化する。

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