第42話 キャンプと作戦会議
移動を開始して数十分が経過した。たどり着いた場所は先程マップで確認した湖のほとりである。モンスターは特に見受けられず、ほかプレイヤーが拠点を制作した形跡もない。
「それじゃあ、ここを拠点とするか」
「だれかテント持ってきた?」
「あ、わたしが」
「じゃあ、ミドリがテント設営で、私とリーフ……でいいのよね?」
「あってるあってる」
「じゃあリーフで周辺の確認よ。それで、アキはミドリの手伝いしながら湖の調査と荷物番よろしく」
「はいよ」
それぞれが割り振られた仕事を始める。ちなみにヘルプで確認した所、拠点となる家やテントなどを作ると、それに応じてい周辺がセーフティエリアになるらしい。
とはいえ、完全に安全というわけではなくイベントなどで与えられた影響のものやプレイヤーからは守られない――つまりは夜に見張りが必要ということだ。
でも、昼間などに動きやすくなるのと目印になるのは事実なので作って損はないと言ったところだろう。
俺はミドリが持ってきたアイテムのひとつのテントを設置するのを手伝う。
「アキさん。あの方リーフさんって……あのリーフさんですか?」
「あのって……あぁ、うん。なんか本人はあんまり自覚というか気にしてないけど、プリンセスブランドのリーフらしいな」
「ですよね。全身Lシリーズで揃えられてましたし……アキさんの服や髪飾りのセンスがいいのも納得です」
かっこいいとか似合ってるってなのか、それとも可愛いとか言おうとしたけど、俺のことを気にして濁してくれたのか判断しづらいな。
「アキさんは今回のイベントでどんなことがしたいですか?」
「どんなことって?」
「上位を目指すとか、特殊なイベントアイテムとかレアアイテムを探したいとか、色々ありそうじゃないですか」
「あぁ~。あんまり考えてなかったけど……そうだな。防具と武器は今は間に合ってるし、アクセサリー系とか欲しいかも。後は料理と調合の新しいレシピとか素材見つけられたらいいな」
「調合に関しては私も同感ですね」
「この島の東から北にかけて森とか草原地帯になってるからあとで行きたいかもしれん」
「ですね。でもティアは北にある山に行きたがりそう」
「まあ、そこは自由行動でもいいかもな。各自楽しむことが大事だと思う」
「アキさんは、なんだかんだ優しいしみんなのこと優先しそうですよね。あ、そっちの杭もう少し強めに」
「はいよ――うーん。基本的に誰かがやりたいことと俺がやりたいことが一致することが多いだけなんだよな」
「そうでしたか」
みんなのためにと意識して行動することはあんまりない。ゲームにハマったのはVRの物珍しさとみんなとプレイしたりしたいからってことだったし、夏海ちゃんが買ってこなくてもやってはいたと思う。調合だって、薬草集めが楽しくて折角だし自分でも作ってみたくなったから。
「完成です。おっと、早速セーフティエリアになったみたいです」
「そんじゃ、湖も水面から出来る限りだけでも確認しちゃうかな」
「わたしは持ってきた他の道具も使える状態にしておきます」
どうやらキャンプアイテムを多く持ってきたみたいだ。
少しして、周辺警戒にいっていた2人も戻ってくる。
「それじゃあ、簡単に自己紹介……はめんどくさいので俺が紹介しよう。えっと、2人とも、まあリーフだ。【裁縫】とか【細工】とかのアバター系の生産職をしてる」
「よろしくおねがいします」
「こちらこそよろしくお願いね」
「ティア。この人プリンセスブランドのリーフさんです」
「……えぇっ!? すごい、有名人じゃない! アキいつのまに!」
「まあ、紆余曲折あってな」
「そういうことならわかったわ」
こいつゲーム内だとものすごいバカだよな。
「えっと、リーフ。一応、メッセージでも紹介した鍛冶職のティアとポーション屋のミドリだ」
「よろしくね」
「よろしくおねがいします」
「そして俺が槍使いのアキということで――そんじゃ、各自行動をしていきたいが、ひとまず持ってきた道具を確認しよう。このサバイバルを生き残るために、探索と同時にとるべき行動が決められるはずだ」
アイテムの持ってこられる制限がある限り、この確認ばかりは必須になってくる。
各々がアイテムを取り出して説明を始める。まずはティアだ。
「見ての通り戦闘用のハンマーと予備の武器いくつか。それとこっちで素材に分解して使おうと思って持ってきた武器の数々に持ち運び可能な携帯火炉と金床のセット。これだけで結構重量があるからね。あとは小型ピッケルとか、鞘の革加工用のハサミかな」
武器や防具も消耗品である以上、あって損はない道具だな。
「わたしはテントや火打ち石などのサバイバルキットと思われるもの一式に調合キットと、濃縮したポーションを数種類です。水さえ手に入れられれば、普通のポーションにわけることができます」
重量の中で最大数を持ってくるための加工を施してきたのか。とても大事だな。
「あたしはアバター制作用のアイテムがほとんどかな。手に入れられるか怪しかった布とか結構持ってきたし。あとは、いくつかのアクセサリー。一定時間休むときの回復量を増やす効果が少しついたやつとか持ってきておいた」
アバター制作とかが役立つかはさておいて、アクセサリーは役立ちそうだ。
「俺は調合キットと料理道具一式だ。その他は解毒系のアイテムにしておいた。サバイバルなら絶対に毒関連の何かがありそうだと思ったからな」
ひと通りアイテムの確認を終えることができた。これらから導き出される答えは――
「えっと、とりあえず空腹度が実装されたんだから、料理は必要だ。でも今は材料がないから、それの採取が重要事項のひとつになる」
「ですね。その他についてはわりとどうにでもなりそうです」
「ってことは、探索と同時に果物とかを見つけたら持って帰ってくればいいかしら?」
「あとは、危険性が少なそうなモンスターは倒して肉を確保するのもいいかも」
「そういうことだな……今は昼だし少し自由行動するとしよう。それぞれ行きたいところは」
「あたしはわりかしどこでもいってみたいかな」
「私は山かなー」
「わたしは草原ですね」
「俺も草原に」
当たり前で予想通りだが若干別れたな。
「初日から1人で行動……どうするかな」
「じゃあ、あたしがティアと一緒に行動するから、2人は草原にいってきていいよ」
「いいのか?」
「火山なら赤系の染料にできるアイテムありそうだし、そうじゃなくても鉱石の中で宝石が見つかればアクセサリーの素材にできるからね」
「じゃあ、2人ずつで今日は動こう。日が暮れる前にはここに戻ってくるってことで」
「わかったわ。じゃあ、リーフいくわよ!」
「おー!」
早速、イベントでテンションが上っている2人は走って北へと向かっていった。
「じゃあわたしたちも」
「おう、よろしく」
「おまかせください。目のスキルも鍛えているので、毒味も目で行えますから」
とても頼もしいミドリとともに東へとあるき始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます