第27話 VSプリンセスマタンゴ
準備を済ませて改めてダンジョンを進む俺たちパーティだったが、特に道中に危険な状況にはならないでボス部屋前までたどり着くことができる。
「ここのボスってどんななんだ?」
「でっけぇキノコ」
「……おう」
それ以上の言葉は返せなかった。
作戦はいつもどおりフェンスがヘイトを集めつつ、俺とファルコが左右と後ろから攻撃を加えていく形に収まる。
そしてヘイトを貯めすぎない程度にリーフは魔法で支援だ。
「あ、ファストポーション使ったらあとで教えてくれな」
「任せるである」
「おう、そんじゃ行くか」
「がんばろー!」
そうしてボス部屋に足を踏み入れる。森の中のフィールドということもあり、俺たちが入ってきた道は蔓が突然生えてきて戻れなくなってしまう。
「死ぬか倒すかってことか」
「転移クリスタルは使えるぞ」
「まだ買ったことねえよ」
「だろうな。ほらでてきたぞ」
退路が塞がったと同時に、広いフィールドの中心の地面から地響きをならしながらキノコの傘が姿を現す。
そして、更にその下から手足の生えた本体が出てくる。少し可愛いと思ってしまう。
「でっけえ、マタンゴみたいだな」
「名前見てみろ」
まだ行動を始めないマタンゴの名前表示を見てみる。
【プリンセスマタンゴ Lv25 Boss】
お姫様だったようだ。
「攻略情報とリーフの経験を合わせると、注意すべきなのはあのデカイ両腕の打撃攻撃と、胴体を体に埋めるようにしての傘でののしかかり。それと毒の胞子の塊を飛ばしてくるこうげきだ」
「了解した」
「了解である! 【ディフェス・オーラ】!!」
敵が動き出す前にフェンスはそう叫ぶ。するとフェンスの周りにエフェクトが現れて、防御力アップのバフがついた。
「いくである!!」
そう言ってフェンスは勢い良く先人をきって斬りかかる。
クマのような硬さはなく刃とダメージはしっかりと攻撃が通る。
俺とファルコもすぐに攻撃に加わった。
攻撃も情報通りで単調ではあるので苦戦はしないでいる。何度か攻撃を食らってしまい、ファストポーションを使ったが、回復量は普通にポーションより劣ってるかもしれないが、自然回復力が一定時間アップする効果がついてるのがいいな。
「結構楽だな! 【グラビティスラッシュ】!!」
ファルコは【両手剣】のアーツだろうか思いっきり地面に叩きつける勢いの縦斬りをマタンゴにぶつけた。その一撃で残りHPが半分を下回る。
その時に、異変が起きた。
マタンゴの薄い茶色だった胴体が、色濃く染まり傘から何かを撒き散らし始めた。
「ファルコ、聞いてないぞ!?」
「オレもしらねえよ! リーフは!?」
「見たことないけど、もしかしたら2回目の人いることで発動するギミックだったらごめん!」
「その可能性が高そうであるな」
一度、それぞれが距離をとる。マタンゴの動きは少し俊敏になるが、それ以上に気になるのが空中を飛んでいる紫色の何かだ。毒攻撃のあれににているが、サイズが小さい。
様子見をしていると体に気持ち悪さが襲いかかる。何があったか確認するとHPが減って、毒にかかってしまっている。
「ファルコ! これ毒の胞子だ! 吸ってると毒になるぞ!」
「まじかよ……ってまじだ! いまきた!」
解毒ポーションを頭から被って空の瓶は投げ捨てる。
「早めに決着つけるぞ。アキは後ろからいけ!」
「わかったよ!」
毒が消えたのを確認してから一気に畳み掛ける。
「【シールドトレイン】!!」
「【アース・ハンマーⅠ】!!」
前にいる2人もアーツをつかって攻撃をしかける。
「【グラビティスラッシュ】!」
俺も普段使わないがアーツ使わないとやばそうというか、また毒にかかりそうだ。
「【チャージスピア】!」
槍のアーツはわかり易い名前が多い。俺は勢い良く助走をつけてやりを突き入れた。
助走距離が長いほどダメージが増す技である。
「だめですかぁ……」
マタンゴはどうやら俺の攻撃に1番イラッとしたようで、体ごと周り用に腕で後方をないでくる。
走り込んだあとということもあり、跳躍することもできずに攻撃に直撃して俺は吹き飛んだ。
「アキ!」
HPがどんどんと減っていくが、色が赤くなったギリギリのところで止まる。
「ギリギリ大丈夫だ……ごほっ」
さすがにそれなりに痛みがきて咳き込む。
「とにかく回復する前に逃げろ! そっちいった!」
「すまないである!」
「マジかよ……」
急いで立ち上がるが、間に合うかどうかは微妙な距離という状態だった。
俺は考える。右に逃げるか左に逃げるか、巨体の横をすり抜けるかの3択だ――正解は違ったようだが。
「【アース・ハンマーⅠ】!」
声が響くとともに、土の塊が空中に現れてマタンゴの顔面に直撃する。そして星マークを頭の上に出しながら膝をついた。
「スタンいれたよ!」
「ナイスリーフ! アキも攻撃先だ! ギリギリ倒せるはずだ!」
「何だよその賭けこええよ」
少し笑ってしまうが、回復はそっちのけで俺はそのまま走り込んだ。そして動く限り槍での攻撃を入れる。周りでも剣やら盾やらが敵にぶつかる音が響き渡り――最後は敵がそのまま地面に倒れた。
「はぁ……はぁ……クリアー!!」
「おっしゃぁあ!!」
思わず叫んだ。叫んだ――ゲームかもしれないけど、初めてと思えるほどでかい達成感がオレの心に襲いかかり、我慢できなかった。
「やったー!」
「ちょっ、リーフ!?」
そしてガッツポーズしてた俺にリーフは抱きついてきた。流石に、すぐに引き剥がしたかったが、HPがないせいか疲労のせいか、少しだけ時間がかかった。
「おめでとう! そして、あたしも目当てのアイテム手に入れられた!」
「全員目的達成であるな」
「よかったぜ。ほれ、アキも早く立て。ダンジョン抜けたところのポータル登録まではしておかないと、第2拠点には後で行くとしてもしんどいぞ」
「お、おう。あ、まってドロップ品確認する」
マタンゴの近くにいって剥ぎ取りもなしに普通にドロップ品を獲得する。レアじゃなくても思い出に、何かの素材なら作ってもらおうかと考えていたが、でたものは――レアドロップだった。
「な、なんか。レアドロでたんだけど」
「マジか! いいな!」
「しかも聞いたことないんだけど! ファルコから聞いてたレアドロと名前違うやつ!」
「なんだそれ!?」
「【虹色の菌花】ってなに!?」
俺がそういとリーフの目が輝く。
「それSレアドロップだよ!」
「Sレアまであるの!?」
「Sレアドロップは雑魚モンスター含めてだけど、拠点ごとに更新されるの。それは第1拠点周辺の植物系モンスターのSレアドロップ! アクセサリーに使える素材で、結構いい効果ってきいたことあるよ! たしか、この前オークションかなりの値になってたはずだし」
「やったじゃねえか、アキ!」
「や、やったぁ! おっと」
ふらついてしまう。
そうするとフェンスがささえてくれた。
「ひとまずは、ポータルまでいって戻るである」
「そ、そうだな」
「ついでにフェンスに運んでもらったらどうだ」
「そこまで疲れてねえよ!」
「金属鎧と可愛い女の子も絵になる気がしてきた。インスピレーションきてる!」
最後の最後は騒がしいが、無事に俺たちパーティはボスを打ち倒して、それぞれの目標を達成することができた。
俺もはれて第2拠点にいく、ネットで脱・初心者の称号と言われている場所までたどり着いた。
ただ、今日はマジで疲れたな。
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