第3話 発破をかけるぞ!
1 これまでと変わらぬやり取り
ミコトが妙な狐に取り憑かれて数日 確かに口うるさく、うっとうしい奴だが、最近は少し慣れてきた。三日間は小言やら何やらに付き合わされるが、その後二日間は彼女の言う通り眠りについているらしく、面倒なやり取りから解放される。
小うるさい狐だとは思うが、適当にあしらってスルーする術も覚えてきた。
もっとも、そのために一〇八体祓わなければならない「あやかし」とやらの数は、初日から一向に減っていない。いや……実際には何度か祓ってはいるのだが、それを上回るだけ、いつもの暴力……もとい、鉄拳制裁が全てを台無しにしているのである。
つまり、一体、二体祓ったところで、乱暴な振る舞いによって毎回、振り出しに戻っているのだ。こればかりは、いつ終わるとも知れない、ミコトにとってはある種の無限地獄に等しい。
それでも、そんな堂々巡りを繰り返しながら、ミコトは普段と変わらない生活を送っている。さっさと、この小うるさい狐を追い出してやりたいという気持ちは未だにくすぶってはいるが、その事に振り回されるのも面倒だと思い始めていた。
そのような訳で、
「ミコトよ……。おぬしは一〇八体のあやかしを祓わねばならぬと言うのに、一向に進んでおなぬではないか。毎度、振り出しに戻っておるどころか、単純に数を考えれば、当初の数以上になっていてもおかしくは無いのじゃぞ。おぬし、本当にやる気はあるのか?」
「あ~、うっさいなぁ……」
こんな調子で人気の少ない場所では、いい加減にあしらっている。当然のように、学校など人の多い場所では返事すらしない。まあ、傍から見れば独り言を言っているようにしか見えないため、クズの言う事にいちいち受け答えする訳にもいかないのは仕方のない事なのだが……。
それでも人ならざる存在であるクズは、やはり人間とは感覚がズレているらしく、お構いなしに話しかけてくる。その事がミコトとしては、なんともうっとうしかった。
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