第4話 琉球1

「どうしましょう? 意識がない、このままじゃ死んじゃうわ。」


船に一人の溺れていた男性が助けられた。ライである。


「あれをやるしかないわね。」


女性が何かをすることを決心した。


「姫、おやめください。」


おつきの者は女を姫と呼んでいた。


「ジイは黙っていて。」


姫は制止しようとするのを振り切って、手当てを始める。


「琉球に伝わりし、ガジュマルの古木(キジムナー)よ。」


姫が呪文を唱え始めると、小さな古木が現れる。


「このモノを助けたまえ!」


小さな古木がライの体の中に入っていき姿を消した。ピカーン。姫の呪文に反応するように、ライの体が光り輝いた。


「ん・・・んん・・・。」


光りが消えると、ライがゆっくりと目覚めた。


「ここは?」


ライは自分が何をしていたのか、分からない。


「船の上よ。」


ライの前にいる姫が答えた。


「君は?」


ライが普通に聞くと、


「無礼者! このお方は琉球王国の首里姫様であるぞ!」


ジイは激怒している。


「やめなさい、ジイ。」


首里姫はジイを怒る。


「西之島に行った帰りに、あなたが海で溺れているのを見つけて助けたのよ。」


首里姫がライに経緯を説明する。


「お、遅くなりましたが、ありがとう。」


ライは助けてもらった、お礼を言う。


「はい~♪」


首里姫様は優しく微笑んだ。


「あなたの名前は?」


まだライは名前を名乗っていなかった。


「ライ、雷と書きます。」


自分の名前をやっと名乗った。


「ライ? 雷と書くなら・・・でん、じゃない?」


日本国では、でんになる。


「でん!? ダサイじゃないですか。」


ライは抵抗するが、


「姫に刃向かう気か!?」


おつきのジイが話に入って来る。


「あなたの名前は、でんよ!」


首里姫は勝ち誇ったように高々と言う。


「え・・・。」


ライは不満タラタラだった。


「これは命令よ!」


姫は人差し指をライに指す。ピキン。ライに衝撃が走った。


「承知。」


ライは西之島での習慣から、自分より強者の命令に従ってしまう。


「ハハハハハッ~♪」


首里姫はライを屈服させてご満悦だった。


「・・・。」


ライは少し戸惑っている。


(姫は強くないのに、なぜ従ってしまったんだろう?)


答えは見つからない。


(命の恩人だからか?)


ライは自分の行動を不思議がる。



「ワンワン~♪」


犬の鳴き声がする。


「ハチ!?」


以前、父と一緒に殺されてしまった、ペットの犬のハチである。


「ワンワン~♪」


ハチは愛らしく鳴き、ライに懐いている。


「どうしてハチが!? 死んだはずなのに!?」


ライには理解できなくて驚いた。


「その犬は霊よ。」


首里姫が言う。


「でんの命が危なかったので、ガジュマルの古木を体内に植えたの~♪」


姫は楽しそうに話す。


「ガジュマルの古木?」


ライは姫が楽しそうなので不安しかない。


「ガジュマルの古木にはキジムナーが宿っていると言われています。」

「キジムナー?」

「沖縄の妖怪よ~♪」

「よ、よ、妖怪!?」


ライは首里姫に妖怪を体内に植えつけられたのだった。


「それで霊力が上がって、犬が見えるようになったのかもね~♪」


首里姫は、あくまで人助けをしたと思っている。


「体に妖怪が入っている・・・。」


ライはかなり動揺している。以前のライであれば、


「・・・。」


何が起きても壊れた心には何も響かなかった。


「妖怪なんて嫌だ!」


ライは泣き叫んでいる。海流に心の穢れを洗い流されたからだろうか?ライは少し年相応の少年になったのかもしれない。


「姫、妖怪を取って下さいよ!」


ライは船の上で暴れていると、ザパー。船に波しぶきがきたかと思うと、にゅるにゅる。巨大な白い足が伸びて、船に巻き付いてくる。


ドパー!


大きなダイオウイカが現れた。


「巨大なイカ!?」


姫は始めて見る巨大なイカに恐怖した。


「でやえ! でやえ! イカを倒せ!」


ジイが掛け声をかけて、船員がイカに突撃するが、


「ギャア!」


逆に、イカに倒されて傷ついてしまう。


「なにをボーっとしているの? あなたも戦いなさい!」


ライは巨大なイカに見惚れていた。


「え!? あ、はい。」


ライは一瞬驚いて慌てる。にゅるにゅる。ダイオウイカの足が、姫に巻き付き足が船から離れる。


「キャアアア!!!」


イカの足が姫を締め付ける。


「助けて!」


姫が助けを求める。


「命令ですか?」


ライは習慣で聞き返してしまう。


「命令よ! イカなんかぶった切ってちょうだい!」


姫は助かりたいので必死にライに言った。


「承知。」


ライはダイオウイカの前にスッと立つ。


「・・・。」


イカとの間合いを計る。ザー。龍の模様の入った鞘から、竜玉が柄に入った一龍雷剣を抜く。トウ。ライはダイオウイカを目掛けて飛び、剣を振り上げる。


「海竜雷覇!!!」


剣を振り下ろす。ガオゥ!海の水は龍のような姿になり、イカの足を食い千切っていく。ゴロゴロ! 天から降り注いだ雷がダイオウイカに襲い掛かり、焼きいかにしていく。カチャ。ライはダイオウイカを倒し、剣を鞘に納めた。


「キャアアア!」


イカの足に上空にさらわれていた姫が上空から落ちてくる。バシ。ライはがっちりと姫を両手でキャッチする。


「ありがとう。でん、あなた意外と強いのね。」


お姫様抱っこ状態のせいか、姫は少しドキドキしている。


「みたいですね。」


ライは少し笑って見せる。


「焼きイカ、食べます?」


ライは気軽に聞いただけだが、


「イカはイヤ!!!!!!!!」


これ以降、首里姫はイカを食べなくなったそうな。


つづく。

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