第29話 トラブル勃発
このところの特訓に次ぐ特訓でさすがにぐったりしたシェリルが自室の窓際で猫の姿でひなたぼっこをしていると、なんだかドアの外が騒がしいと思った次の瞬間、エリーシアが突進してきた。
「エリー、どうしたの?」
「話は後! 行くわよ!」
「うきゃあぁぁっ!!」
いきなり駆け寄ったと思ったら、問答無用でエリーシアが自分の体を抱え上げて走り出し、シェリルはたまらず悲鳴を上げた。
「エリーシアさん、何事ですか?」
「大至急、王妃様の所に行くわ! リリスはここで待機していて!」
「は、はい!」
慌てて尋ねたリリスにエリーシアが怒鳴り返し、足を止めずに後宮の廊下を駆け抜ける。
「エリー、一体何事?」
「ラミレス公爵が、陛下に謁見を願い出てきたのよ。シェリルの偽者を連れて」
「え?」
忌々し気に告げられた名前に聞き覚えはなく、更に(私の偽者ってどういう事?)と、シェリルは益々訳が分からなくなった。しかしエリーシアはそのまま、ミレーヌの私室の一つに飛び込んだ。
「お待たせしました! シェリルを連れてきました!」
ゼイゼイと息を乱しながら報告した彼女を見て、ミレーヌが困ったように微笑む。
「ご苦労様です、エリーシア。すぐに準備ができますか?」
「大丈夫です」
「それではシェリルはこちらに」
「……はい」
ミレーヌが座っているソファーの傍らに落ち着いてからシェリルが見回すと、カレンを筆頭として、もう顔なじみになっている侍女達が揃って険しい表情をしているのが目に入った。それを不思議に思っていると、ミレーヌから声をかけられる。
「エリーシアから話を聞きましたか?」
「私の偽者が現れたとか……」
「ええ。正確には『行方不明になられていた第一王子ラウール殿下』の偽者です。先ほどの謁見室内の様子を記録した物をこちらの壁に投影して貰うので、まずはご覧なさい。それではエリーシア、始めてください」
「はい、それでは皆様。こちらをご覧ください」
その直後にエリーシアが呪文を詠唱し、白い壁面に鮮明な画像が浮かび上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます