第23話 不憫な国王陛下

 主君を蔑ろにする発言をしたカレンだったが早速その手腕を発揮し、国王、王妃、レイナの側近達と即座に予定を擦り合わせ、翌日には顔合わせの場を設けた。その会場となった王妃の私室に、珍しく気合の入ったドレス姿で出向いたシェリルだったが極度に緊張していたのも最初だけで、徐々に虚脱感がその心の中を占めていった。


「その……、シェ」

「最近シェリルが、随分人の姿を見せてくれる様になって嬉しいわ。一緒にお茶も楽しめますし」

「ところで」

「今日はこの前私が贈ったドレスを着てくれて嬉しいわ。やっぱり若い方には明るい色が似合うわね」

「レイナ様、ありがとうございます。私には勿体ないドレスです」

「ドレスと言えば」

「やはりレイナは趣味が良いわね。普段からミリアに着せる服を整えているから、若い方の流行にも明るいし。あなたにお任せして正解だったわ」

「そんな! 普段使いからともかく、正装をする際の衣装なら、ミレーヌ様のセンスにお任せしなければいけません。私などではとてもとても。シェリル姫に恥をかかせてしまいます」

「その、シェリルの」

「正装と言えば、再来月催される予定の国王即位二十周年記念式典の夜会で、シェリルを正式に御披露目しようと考えているの」

「私達で衣装及び装飾品の一切を相談中ですわ。楽しみにしていてくださいね?」

「ありがとうございます」

「…………」

 大きな円形のテーブルに国王であるランセルを挟んでミレーヌとレイナが座り、その向かい側にシェリルとエリーシアが座ってお茶会、という体裁を取ってはいたが、最初に挨拶を交わしてからはミレーヌ達がランセルを無視して笑顔でシェリル達に語りかけ、彼抜きで和やかに会話が進んでいた。

 彼はなんとかして会話に混ざろうと努力するものの、悉くミレーヌ達に流されてしまい、とうとう項垂れてしまう。ここについて来た侍従や警護の騎士達が、そんな主君を壁際から憐憫の眼差しで眺めていた。しかし妃達の侍女達は微笑ましくその様子を見守るだけであり、一種異様な雰囲気を醸し出す中、シェリルは困惑顔で隣の義姉に囁いた。


「エリー、ちょっと可哀想」 

「私に言われても……」

(一国の王様が、正妃と側妃に揃って邪険にされているってどうなの? シェリルに言われるまでもなく、さすがに気の毒になってきたわ)

 そこまで考えたエリーシアは適当な話題はないかと素早く考えを巡らせ、思いついた事を控え目に申し出てみた。

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