おはなしシリーズ

おさむ

第1話 二匹の兄妹

 とある家に、二匹の猫の兄妹が住んでおりました。

 二匹にはご主人様がいます。


 兄猫はご主人様に甘え上手でした。

 妹猫はご主人様に甘えることは決してしません。

 ご主人様は二匹とてもとても、可愛がりました。




 あるとき、兄猫はお腹を空かせていました。

 なぜか、きのうからご主人様がエサを与えてくれないのです。

 兄猫は、得意の「甘え上手」で、ご主人様にエサをおねだりしました。

 ご主人様は、微笑みながらエサを与えてくれました。

 

 あるとき、兄猫はまたお腹を空かせていました。

 ご主人様からエサを与えてくれなくなったのです。

 兄猫は、得意の「甘え上手」で、ご主人様にエサをおねだりしました。

 ご主人様は、エサを与えてくれました。


 あるとき、兄猫はお腹を空かせていました。

 またご主人様からエサを与えてくれなくなったのです。

 兄猫はカンカンに怒りました。

「なぜエサをくれないんだ!」

 兄猫は、得意の「甘え上手」で、ご主人様にエサをおねだりしました。

 しかしご主人様は、エサを与えてくれません。


 兄猫はたいそうお腹を空かせていました。

 ご主人様がエサを与えてくれなくなってから、ずいぶんとたっていました。 

 そしてふらふらになりながら、意を決して窓の隙間から家の外に飛び出しました。




 外は雨です。

 ぽつんと、兄猫は立ち尽くしていました。


 しばらくして、一匹の猫が通りかかりました。

 妹猫でした。口になにかくわえています。

 兄猫は、得意の「甘え上手」で、妹猫に「それ」をおねだりました。

 じっと兄猫を見つめて、妹猫は「それ」を兄猫にあげました。

 兄猫はたいそうよろこびました。

 そして、その場から立ち去ろうとする妹猫に、

「ありがとう」

 兄猫は言いました。

 妹猫は、何も言わず去っていきました。

 そして兄猫は、「それ」をくわえてご主人様が待つ家に帰っていきました。

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