第58話・駄目な天使の活用法
冒険者ギルドから急いで屋敷へと戻った俺は、休む間も無く館内を走ってラビィの部屋へと立ち入り、だらしない寝相で惰眠を貪っているラビィを叩き起こしてから問題の件について根掘り葉掘り尋問を繰り返していた。
「だからあ、私は何もしてないってさっきから言ってるでしょ!」
「本当に本当か? 実は気付かない内に何かしちゃってたとかないか?」
「あのねえ、気付かずにやってたら私にだって分かるわけないでしょ?」
「確かにそうだな……」
気持ちが焦っていたとは言え、ラビィに正論を突かれると何だか無性に悔しくなる。
とは言え、今回のラビィはあらゆる角度から問い詰めてもまったくボロを出さない。さすがに三十分もかけて問い詰めた結果ボロを出さないなら、ラビィは今回の件には何も関与していないと考えてほぼ間違い無いだろう。もしもラビィが何かしら関与しているのなら、既にボロを出しているだろうから。
「まあ、とりあえずお前が今回の件に関与してないのは分かったよ。疑って悪かった」
「たくっ……それにしても迷惑な話じゃない。どこのどいつがやったか分からないけど、そいつのせいで何もしてない私が疑われるなんて納得いかないわ!」
ラビィは憤慨しながらそんな事を言うけど、元はと言えば普段の行いが悪いから疑われるわけであって、疑われた原因は自分自身にあるのだとそろそろ気付いてほしいもんだ。
まあ何にしても、このまま放っておけばラビィは冒険者資格を剥奪されかねないし、そうなれば当然、ラビィと一緒に居た俺達にまでどんなとばっちりが来るか分からない。世の中で悪評ほどやっかいなものは無いから、ここは何としてでもそれを阻止したい。
そういった経緯もあり、俺はラビィを含めたみんなをリビングに集め、今回のアクア湖汚染事件の経緯を話してから事件の解決を図る為に協力を求めた。
その協力要請に関してリュシカは当然の様に傍観者の位置を崩さない意思を示したけど、それでも協力自体を拒否する事は無かったし、『知恵くらいなら貸しますよ』と言ってくれただけ協力的であると思える。まあ、リュシカもラビィが冒険者資格を剥奪されるのは困るだろうし、止むを得ないと言った感じかもしれないけど、それでも彼女の知恵を借りられるのはありがたい事だ。
そしてそんなリュシカとは対照的に協力的だったのは、ラッティとミントだ。まあ、二人の性格を考えれば拒否する事は考えられないけど、事件解決の為に見せていた気合はラビィよりも凄かった。
とりあえずギルド側がどのくらいの期間でどの様な決断を下すのかは分からないけど、行動は速いに越した事はない。俺達は何日間か野宿する事も想定して準備を進め、問題のアクア湖へと向けて出発をした――。
「こんな所にまで汚染が進んでるんだな……」
リリティアの街を出てしばらく、俺はアクア湖へと続く道を歩きながら用水路の一つを見て声を上げた。昨日帰る時まではとても澄んだ水が流れていた用水路の水は見る影も無く黒く濁り、それはアクア湖へ近付くにつれてどんどんと酷くなってきている。
ギルドの受付お姉さんの話では浄化能力を有した冒険者などに水源の浄化や汚染が広がらない様にしてもらっているそうだけど、街に近いこんな場所にまで汚染が広がっているのを見ると、その対策もギルドが思っていた程の効果を出しているとは考え難い。やはりアクア湖が汚染された原因を探してそれをどうにかしないと、この問題は解決しないのだろう。
事態が思っていたよりも深刻になってきているのを感じつつ、俺達はアクア湖へと急いだ。
「――あっ! ラビィじゃない! 何でこんな所に来てるのよっ!」
モンスターの襲撃を掻い潜ってアクア湖周辺へと着いた瞬間、よく酒場でラビィと喧嘩をしながら酒を飲んでる冒険者のシャンティと出くわした。
「アンタこそこんな所で何してるのよ? ペチャパイ」
「ペチャパイって言うな! このトラブルメーカーの疫病神っ!」
「何ですって!? アンタみたいなペチャパイにそんな事を言われる筋合いは無いわよっ!」
「私だってアンタみたいな傍若無人の馬鹿にペチャパイなんて言われる筋合いは無いわよっ!」
この二人がどのタイミングで出会い、何があってこの様な関係になったのか俺は知らない。
けれどいつの頃からか、この二人が今の様な言い合いの喧嘩をしながら酒を飲んだくれているのをよく見かけるようになった。最初にその様子を見た時はかなり驚いたけど、今ではこの光景にもすっかり慣れ、どこかこの二人の喧嘩が微笑ましく見えてしまっていた。いわゆる喧嘩するほど仲が良い――ってやつに見えるわけだ。
「いつもながら二人は仲が良いね」
「「どこがよっ!!」」
タイミングピッタリに俺へと反論する二人。
さっきみたいに顔を合わせればいがみ合う二人だけど、なぜか息はピッタリだ。まあ、二人がこうしていがみ合うのはもはや話を始める為の儀式みたいなものだから、今更この二人がどれだけいがみ合おうと気にはならない。
「はははっ。まあそれはいいとして、シャンティさんはなぜこんな所に?」
「私はギルドに依頼されてアクア湖の浄化作業をしている術者の護衛をする為に仲間と手分けして辺りを巡回してるのよ。そう言うリョータ達は何でここへ? あなた達もギルドから派遣されて来たの?」
「いや、俺達は――」
俺は理由を尋ねてきたシャンティさんに対し、これまでの経緯の説明と、ギルドからの依頼ではなく独自にアクア湖汚染の原因を探りに来た事を説明した。
「――なるほど。ラビィが疑われてるからその誤解を解く為に来たわけね。まったく……リョータも大変ね。そんな疫病神なんてさっさとどこかに捨てて来ればいいのに」
「それもそうなんですが、普通のゴミと違って自分の意思で戻って来るんでどうしようもないんですよ」
「あははっ! 上手い事言うわねリョータ!」
「あんた達……後で覚えておきなさいよ……」
「まあ、気が向いたら覚えておいてあげる。それよりも、今は浄化作業中の術者と巡回中の冒険者が居るから、アクア湖へは近付けないわよ?」
「そうなんですか? 困ったなあ……」
「……まあ、リョータ達とは知らない仲でもないから、仲間と術者達には私から調査の事は伝えてあげる。それである程度の調査は出来るだろうから」
「本当ですか!? 助かります。ほら、お前もお礼を言えよ」
「……ありがと」
「お礼なんていらないわよ。これはみんなの生活に関わる重大な事だし、別にアンタの為じゃないんだから。それじゃ、私はみんなにリョータ達の事を伝えて来るから、しばらくそこで待ってなさい」
シャンティさんはああ言ってるけど、本当はラビィの事も心配してるんだと思う。素直じゃないなと思いつつも、その分かりやすい態度に思わず笑みがこぼれる。
「何よアイツ、偉そうにさ。べーっだ!」
当の本人が遠くへ行った後、ラビィはその方向へ顔を向けてそんな悪態をついた。コイツにはシャンティさんの優しさが微塵も伝わっていないのだろうか。
その後しばらくして戻って来たシャンティさんから、くれぐれも術者の邪魔をしないように――との注意を受けた後、俺達はアクア湖汚染の調査を開始した。
まずはアクア湖の状況を確認しようとその周囲をぐるりと一周回って見たんだけど、アクア湖の湖底までしっかりと見えていた澄んだ水はまるで大量の墨汁でも流し込んだかの様にドス黒く染まっていて、もはや昨日見ていた同じ湖だとは思えない程だ。原因はこれから調べるから断定はできないけど、少なくともモンスターが原因であるとは思えなかった。もちろんそう思う理由はある。
それはモンスターと言えどその大多数は水が無いと生命を維持できないから、そんなモンスターが水源をこの様に汚すとは考えにくいと言う事。
もちろん水の確保をしなくても生きていけるモンスターも少なからず居るし、アンデッドに関してはその定義にすら当てはまらないから根拠としては弱いかもしれない。けど、仮に水を必要としないモンスターがこんな事をするとしたら大なり小なり前例があるはずだから、やはりモンスターの仕業とは思えない。
しばらくアクア湖の様子を見た後、俺達は現段階で思った事や気付いた事をそれぞれ言ってみる事にした。
「みんな、とりあえず今の段階で何か気付いた事はあるか?」
「そうですねぇ。とりあえずぅ、あの汚染の原因はモンスターではないでしょうねぇ」
「そうですね。私もそう思います」
初っ端に意見を述べたミントに対し、リュシカもそう言って頷いた。何となくだが、自分が思っていた事がこの二人の意見と合っていると安心する。それだけリュシカとミントが頼りになると言う事だ。
「そうなの? 私はてっきりモンスターのせいだと思ってたけど」
案の定と言うべきか、ラビィは一番責任を擦り付けやすい対象へと矛先を向けていた。まあ、ラビィに関しては最初っから何も期待はしていないから問題はないけど。
ちなみにラッティは、『誰かが悪戯でこんな事をしたんじゃないのかな?』と言っていたけど、その考えはラビィに比べればまだまともだ。まあ、さすがに悪戯でこんな事をする奴が居るとは思えないけど、何かの意図があって故意にアクア湖の汚染を考えた言うの十分に考えられる。
「リュシカ、ミント。モンスターが原因じゃないって言ったけど、何か理由はある?」
「そうですね。とりあえず昨日からの短時間でこの巨大なアクア湖を汚染できる能力を持ったモンスターを私は知りませんし、仮にそんなモンスターが以前から居たとしたら、とっくにギルドから討伐指定を受けているでしょうからね」
「そうですねぇ。それにこの汚染にはどこか作為的なものを感じますからぁ、おそらく人為的に起こされたものでしょうねぇ」
うちのパーティー内でも博識で頭脳派の二人がこう言っているのを聞くと、いよいよアクア湖の汚染が人為的なものだと思えてくる。
二人の話からとりあえず今回の事件を人為的なものだと考えて行動する事を決めた俺達は、これからどうするかを話し合った。その結果、まずはアクア湖周辺を含めた怪しい場所を調査して犯人に繋がりそうな手掛かりを探してみようと言う結論に至り、リュシカを除いた四人で二人一組を作って周辺の調査を開始した。
肝心の調査の組み合わせは少し迷いはしたけど、俺とラッティ、ラビィとミントが組む事にした。理由は俺とラビィが組むと、モンスターに襲われた時にヤバイからだ。それ以外の理由はない。
とりあえず一時間くらい調査をした後で集まろうとみんなで決めたので、俺とラッティは時間いっぱいまで周囲の怪しい場所の調査を行ったが、結果として怪しげな物はおろか、ゴミの一つすら見つかる事はなかった。まあ、仮にこの事件の裏に人間の犯人が居たとしてもテレビドラマの様に都合良く証拠品を残して行くとは思えないから、現実はこんなものだろう。
現実の非情さに溜息を吐きつつ集合場所へ向かうと、先に集合場所へと戻って来て居たラビィがニマニマとした怪しげな笑みを浮かべて俺達を出迎えた。
「何だよラビィ。薄気味悪い笑顔を浮かべてさ」
「アンタね、天使の私に向かって薄気味悪い笑顔とは何よ? この天使スマイルを前に罰当たりな事を言わないでよね」
「分かった分かった。それで? その笑顔は何なんだ? 何か見つけたのか?」
「フフン。見て驚きなさい! ついさっき戻って来る時に、木の枝に引っかかってるコレを見つけたんだから!」
その問いかけに対し、ラビィはドヤ顔で俺達の前へと左手を差し出す。するとその左手には、汚らしい麻布の巾着袋が握られていた。
「……その汚い袋が何だってんだ?」
「これはきっと犯人が残して行った物に違いないわよ!」
キラキラとした目で自信満々にそう言うラビィは、コレがただのゴミかもしれないとは考えてもいないのだろう。
俺は短く溜息を吐いてからラビィの持つ汚い袋を掴み取り、そのまま地面へポトッと落とした。
「ちょっと! 何するのよっ!」
「お前なあ、こんなのが犯人の残して行った物なわけないだろ? こんなのはただのゴミだよゴミ」
「そんな事ないもん! 絶対にこれは犯人のものだもんっ!」
「それなら犯人の物だって証拠を見せてみろよ」
「うぐっ、それは……」
「あら? これは――」
俺とラビィが言い合いを始めてすぐ、落とした袋を見たリュシカが声を上げて袋を拾い上げ、じっと袋を見つめ始めた。
「どうかしました?」
「これはロマリアの紋章ですね」
「ロマリア?」
「はい。刻印がだいぶ薄れていますが、これは東のラグナ大陸にある小国、ロマリアの紋章で間違い無いでしょう」
「ほらっ! やっぱりコレは犯人が落とした物だったんだよ!」
「おいおい、まだそうと決まったわけじゃないだろう? それでリュシカ、そのロマリアってどんな国なんですか?」
「ロマリアは先程も言った様に小国なのですが、他の国より魔術やマジックアイテムなどの研究が優れていて、その方面ではわりと有名ですね」
「それじゃあ仮に今回の件がそのロマリアの仕組んだ事だと仮定したら、こんな事件を引き起こせそうですか?」
「可能性としてはあるでしょうね。あの国は他国には出回っていないマジックアイテムも多数あるようですし」
「なるほど……」
「あのぉ、ちょっとその袋を貸してもらえますかぁ?」
突然俺とリュシカの間に割って入って来たミントは、リュシカの前に浮かびながら短い両手を差し出した。そんなミントに対し、リュシカは『どうぞ』と言って汚れた袋を手渡す。
するとミントは開かれた袋の中を覗き込み、『やっぱりそうですねぇ』と言って小さく何度か頭を縦に振った。
「何が『やっぱりそうなんですねぇ』なんだ? ちゃんと説明してくれよ」
「あっ、ごめんなさいですぅ。実はですねぇ、この袋の中から感じる嫌な波長とぉ、アクア湖全体から出ている嫌な波長がまったく同じなのですよぉ」
「えっ!? それじゃあ……」
「アクア湖の汚染の原因はぁ、ほぼ間違い無くこの袋の中に入っていた物で引き起こされたんだと思いますよぉ」
「ほーら見なさい! だから私が言ったじゃないの! 絶対に犯人の物だって! あー、これで私はリョータがした仕打ちと言葉に対して盛大に謝罪を求める事ができるわっ!」
ミントの言葉を聞いた事で一気に息を吹き返したラビィが、ウザイくらいに俺へと詰め寄って来る。しかしラビィの言い分を違うと決めつけたのは事実なので、ここは謝るのが筋だろう。めちゃくちゃ嫌だけど。
「ぐっ……俺が悪かった。すまん」
「えっ? よく聞こえないんですけどー?」
「俺が悪かった! すみませんでした!」
「あれ~? リョータの故郷ではこんな時にする正式な謝罪の仕方が無かったっけー? 私の記憶違いかしらー?」
――コイツ、こんな機会は無いと思って調子に乗りやがって……。
要するにラビィは俺に対して土下座を要求しているんだろうけど、要求の仕方が限り無く腹立たしい。
しかしここでそれを拒否すれば、俺もラビィの位置まで墜ちてしまう事になる。理由はどうあれ悪かった事に対してはしっかりと謝罪は入れなければいけないだろうから、俺はラビィの要求を受け入れて綺麗な土下座を実行した。
「今回はラビィを疑ってすみませんでしたー!」
「おーっほっほ! まあ、私は心が広いから今回はドーンと謝罪を受け止めて許してあげるわよ! 私の心の広さに感謝なさい!」
ラビィの心が広いかどうかは別にして、今回はこれで終わったのだから良しとしよう。それに問題はこんな事ではなく、アクア湖の汚染をどうにかして解決する事なのだから。
「それでさ、結局どうすればアクア湖の汚染問題を解決できそうなんだ? ミント」
「そうですねぇ。汚染が人為的なものは確かでしょうしぃ、まずはアクア湖に投入されただろうアイテムを回収する事が先決でしょうねぇ」
「なるほど。確かにそうだね」
アクア湖の浄化をするにしても、やはり原因を取り除かないと術者達の浄化作業も効果がでない。ここはとりあえず、原因となっているであろうアイテムを探し出すのが得策なのは間違い無いだろう。
俺達はとりあえず出した結論を元にシャンティさんへ報告を入れ、アクア湖へ小船を出してさっそく原因のアイテム探索を始めたんだけど、一センチ先も見えない程に黒くなったアクア湖の中から問題のアイテムを見つけ出そうなんて砂漠に落とした指輪を探すくらいに難しく、実際に俺達の作業は困難を極めていた。
「くっそ……これじゃあ
「もういっその事、アクア湖の水を全部抜いて探せばいいんじゃないの?」
「ラビィよぉ、気持ちは分からんでもないが、それだと山から流れて来る水も止めなきゃいけなくなるだろ? まあその方法もやり方としては有りだろうけど、時間と金がかかり過ぎる」
「分かってるわよ。ちょっと言ってみただけじゃない」
「たくっ……」
ラビィの言葉に溜息を吐きながらそう答えた後、俺は改めてアクア湖の様子を見てからとある事に気付いた。
実はアクア湖へと向かう時からちょっとした違和感を覚えてはいたんだけど、それが何なのか今の今まではっきりとしなかった。だけど小船に乗ってアクア湖の上を廻っている内に、その違和感が何だったのかがようやく分かった。
「ミント。これだけ汚染が広がってたら、普通は魚も住めないよな?」
「そうですねぇ、基本的にはそうだと思いますよぉ?」
「それじゃあさ、これだけ汚染が広がってて、魚の死体の一匹も浮いてないっておかしくないか?」
「そう言われればそうですねぇ……」
俺が思っていた違和感。それは水中生物に大した影響が見られない事。
今回の事件が本当に水源の汚染だとすると、先程も言った様に魚の死体くらいは浮いてくるだろう。しかし街を出発してからここまでの間も、アクア湖へ着いてからも、そんな様子は一切見られなかった。
これはあくまでも仮定の話だが、もしもそのアイテムが水を汚染するアイテムではなく、そう見せかけるだけのアイテムだったとしたらどうだろうか。
そう考えた俺は、試しに小船に積んでいたバケツにアクア湖の水を汲んでみた。
「やっぱりそうだ」
バケツに組み上げたアクア湖の水は明らかに透明度が上がり、中には数匹の小さな小魚も泳いでいた。俺の予想がはっきりと証明されたわけではないけど、かなり核心に迫ったのは間違い無いと思う。
「えっ? 何々? いったいどういう事よリョータ?」
「にいやん、お水が少し綺麗になってるよ?」
俺が汲んだバケツの水を見たラビィとラッティが、驚きの声を上げながら小首を傾げる。二人はそんなバケツの中の水を見つめながら『何でかなー?』とか言って中の水をツンツンと触り始めた。
するとラビィが触っていた部分だけが、明らかに水の透明度が増したのが分かった。そしてその様子を見た瞬間、俺の中に一つの解決アイディアが浮かんだ。
「……なあ、ラビィ。今回の件、お前がやったんじゃ無いとみんなに分からせた上で汚名返上をする方法があるんだけど、乗るか?」
「えっ!? 本当に? やるやる!」
「そうか。それじゃあミント、ラビィを抱えて飛んでくれないか?」
「了解ですぅー」
「えっ? 何でそんな事するの!? ちょ、ちょっと待ってよ! 何だか嫌な予感がするんですけどー!」
「別に危険な事をするわけじゃないから安心しろ。それじゃあミント、そのままの状態でゆっくり下降して、ラビィの胸くらいまでをアクア湖に沈めてくれ」
「分かりましたぁー」
「ちょっと待ちなさいよー! こんな所に私をつけるなんて何考えてんのよっ!」
ミントに服を掴まれた状態でバタバタと暴れるラビィ。そんなラビィに向けて『暴れちゃ駄目ですよぉ』と言いながら、ミントがラビィを徐々にアクア湖の中へと沈めていく。
するとラビィが浸かった部分から半径三メートルくらいの範囲のドス黒かった水が徐々に澄み渡り始め、最終的にラビィが浸かった部分だけは湖底まではっきりと見える様になった。
「よしっ! 思ったとおりだ! それじゃあミント、そのままの状態でゆっくりと移動をしてくれ」
「はいなのですぅ!」
「ちょっとー! 少しは私の事も考えなさいよねー!」
使われたアイテムが魔術的な効果でこの現象を起こしているとしたら、きっとラビィを有効活用できると俺は考えた。こうしてラビィを利用したアイテム探しが功を奏し、俺達はしばらくして原因となったと思われるアイテムを発見し回収する事に成功した。
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