第七話 救出編⑦

「結局、あなたの言う通りでした。私の周囲で命に関わる重大な事件が起きました。モミカさんのお母さんからブログで交通事故の件が書かれるまで、あたしはあなたのことを信じていませんでした。でも、これであなたのことを信じることができます」

「……」

 私は言葉を発することができなかった。

 女子生徒の助ける人は親族か知人と決めつけていたからだ。

 女子生徒のか細い声がスマートフォンから聞こえる。

「あの、あたし、これからどうしたらいいんでしょう? あたしにできることって何でしょう?」

 私はなるべく平静をよそおった。私が混乱しては女子生徒まで混乱すると考えたからだ。

「モミカさんとはどれくらい前からの知り合いなの?」

「六ヶ月くらい前からです。そのサイトのワイワイ広場の十代のチャットルームでモミカさんと知り合いました」

「……」

 またしても無言になってしまう。

(ワイワイ広場? 十代のチャットルーム? 意味がわからない)

 私は素直に女子生徒に私がインターネットに通じてないことをくことにした。

「実は、私、ネットのことが全然わからないの。フェイスブックはテレビで聞いたことがある程度で、アクセスしたことなんてないの」

「パソコンも持ってないんですか?」

「いや、パソコンはある。二年位前に親に買ってもらったものだけど、全然、使ってないの」

「それじゃ、家でネットはしないんですか?」

「母がするわね。私の母は結構、機械に強くて、タブレット型端末って言うの? あのスマホをでっかくしたようなので、キッチンでレシピとか見ながら料理をしてたりする」

「じゃあ、ネットを使える環境にはあるんですね」

「一応」

「あの、もし良かったら、私がアクセスしているサイトに登録してくれませんか?」

「どうして?」

「そのサイト、登録制でさっき話したブログとかも、登録しないと読むことができないんですよ。アカウントが必要なんです」

 私は女子生徒が言ってることの半分くらいしか理解することができなかった。

(モミカさんのブログを読むためには登録をしなければならないのか。面倒な話だ)

 私は素直に言った。

「ごめんなさい。やり方が全くわからないの。さっきも話したけど、私、ネットとか本当にできないの」

「スマホはやりますよね」

「スマホは電話とメールくらいね。あっ、最近はカードゲームにはまってるわね」

 私は現在やっているゲームアプリのタイトルを言った。

「スマホはできるんですね。じゃあ、パソコンでネットを使うのも問題ないと思います」

 私は違和感を覚えた。

(会話を向こうがリードしてる気がする。私の場合は会話の主導権は美少女にあった。しかし、今、会話の展開を広げているのは女子生徒だ。なんだか情けない)

 私は少々自己嫌悪におちいった。

 私の気持ちを無視するように、会話はどんどん進んでいく。

「あの、あなたの家に行ってもいいですか?」

「いつ?」

「できれば、早くに行きたいです。そのネットの文章を読んで、判断してもらいたいんです。もしかしたら、このブログはモミカさんの悪戯いたずらかもしれません。それを判断して欲しいんです」

 私は女子生徒の言葉を聞いて、少し安堵あんどした。

(そうか。彼女も不安なんだ。確かに、誰かが亡くなるような夢を見て、それが現実に繋がっているとわかったら、心配をしない人間などいない。まして、それは私によって予告されたことだ)

 私は自信を取り戻した。

「わかった。明日、会いましょう。放課後にどこかで落ち合うってのはどうかしから?」

「それでいいと思います」

 私は、私が通う高校と、女子生徒が通う商業高校のちょうど真ん中にあるコンビニを指定した。

「そこに四時頃集合っていうのはどうかしら?」

「わかりました、四時ですね。もしかしたら、少し遅れるかもしれません」

「大丈夫。あなたが来るまでちゃんと待ってる」

「ありがとうございました。それでは、明日の四時に」

「気をつけてね」

 私はそう言い残すと、スマートフォンの終話のマークをタップした。

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