第18話『魅惑の褐色肌! ヒーローショーを見られた方は1000円割引! 日焼けサロンあぽろん』

 本日は『本屋バベル』ビル2階で営業されている、『日焼けサロンあぽろん』から提供いただいた一ヶ月日焼けプログラムである。

 週一ペースで日焼けサロンに通い、小麦色に肌を焼き上げて、健康美を獲得するのだ!


 ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”は、さっそくスーツのまま体験しようとしたが快くNGをいただいた!


 変身前の青年”大鉢 和紀”(おおはち かずき)は、あぽろんに入場すると案内された個室で全裸になり、肌を保護するオイルをくまなく塗り込むと、日焼けマシーンへ潜入する!


 日焼けマシーンは4台、日焼けサロンに小規模店舗が多いのは、日焼けマシーンの電力がハンパ無いので、一杯並べることが出来ないからだ。


 もし電力会社の契約を大口にすると、電気料金が跳ね上がってしまうい大変だぞ!!


 日焼けマシーン内部では紫外線が危険なので目を閉じよう。

 そして初回は20分ほどに留めないと、火傷をおこして肌がボロボロになってしまうことがあるので気をつけよう!


 インストラクター様からそんな説明を受けたヒーロー”ハチカヅキン”……もとい変身前の青年”大鉢 和紀”は、無事にルールを守って正しく使用することに成功したのだった。


 師走も近いのに日焼けマシーンの中は常夏の国、ハワイアン気分を堪能したヒーロー”ハチカヅキン”は『魅惑の褐色肌! ヒーローショーを見られた方は1000円割引! 日焼けサロンあぽろん』のステッカーを、タンクトップと短パンに改造されたヒーロースーツからはみ出す小麦色の生足に貼り付け、ステージにヒラリと登ると、今日も人質の花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)の身代金を要求する怪人”犬王モノー”(イヌオウモノー)の目の前でその凶器じみた肉体美を、これでもかというぐらいのマッスルポーズで見せびらかす!


コムギイロノニクタイィイイ!


 小麦色の肉体がステージ上で躍動するような音がスピーカーから鳴り響く。


「ギャアアアアアアアア!? 冬のさなかにそんな魅惑的な小麦色の肉体など存在するはずがないぞヒーロー”ハチカヅキン”!? ……そ、そうか! 『日焼けサロンあぽろん』か!! 心も体も常夏気分、電話で予約すれば何時でも好きな時に健康的な褐色肌にチェンジ出来てしまう『日焼けサロンあぽろん』ならば納得できる!! お、おのれハチカヅキン。私も早く美しい小麦色にお肌を焼き上げたくて仕方なくなってしまうわ!! え、ええい……ダメだ、耐えられん!! 今から予約を入れに行くぞっつ! 撤収! 撤収だー!」


 言い終わるやいなや怪人”犬王モノー”は、まだ抱えていた花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)をそっと下ろすと---花男はマッスルポーズの”ハチカヅキン”に怯えている---『日焼けサロンあぽろん』へ走り去っていったのだ。


「スーツは脱いで行くといいぞ!」


 ヒーロー”ハチカヅキン”の優しい言葉が背後から追いかけて消える。


 戦いは終わったのだ。


「魅惑の褐色肌! ヒーローショーを見られた方は1000円割引! 日焼けサロンあぽろんならどんな季節も夏真っ盛りだっ! 家にこもりがちで肌が白くなってしまうこの季節、魅惑の褐色肌を手に入れて皆に差をつけよう! ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”はオイルをシャワーで落とし忘れてきたのでスーツの中がヌルヌルだ!! よい子の皆はオイルを洗ってから服を着るようにしようね!! ハチカヅキンとのお約束だ!」

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