131~140
131
優秀だね。
その一言と金木犀の香りは、私の最初の罪を思い出させる。私のせいで
私は、きっと立派に生きられたあなたの幻影を追っているだけの、本当は意気地なしで臆病な人間だ。私はこれからも、理想のあなたを生きていく。
―秋の幻影を追って
132
無生物に感情と思考を持たせる研究を始めて幾星霜、ついに実用段階に入った。被検体に選ばれた私のコップに多数のコードが繋がれ、解析結果が表示される。
――助けてなぜ感情があるの辛いなぜ思考だけがあるのいつまで苦しむの感情も思考も要らない助けて助けて助けて。
私はその日、研究の中止を決めた。
―コップの感情
133
いくら探しても見つからない
神様は好奇心が強いので、人間の持ち物を触りたくてうずうずしているものです。ですから、靴下が片方だけ消えたり、置いた場所に電子機器が無かったりしても、どうか怒らないで下さいね。
―神様のいたずら
134
やった。彼女も俺が好きだなんて夢のようだ。彼女はもじもじしながら、「私ね、真の愛を手にするまで死ねない不死者なの。これで
その言葉は衝撃だった。「え! 俺も同じだよ」まさか不死者仲間だとは。
「そうなの? きっと運命ね」
「頑張って一緒に死のうね!」
ああ、本当に夢のようだ。
―真の愛を手にするまで
135
私だけだと思っていた。全てが適切に管理された社会で、沈められてなお燃え上がる水中花火のように、世界というシステムへの憎悪を募らせているのは。
彼女と目が合って、一秒で思いが通じた。
これは些細な反抗に過ぎないが、私達自身のための闘争だ。飼い犬が飼い主の手を噛み砕くところ、見せてやれ。
―飼い犬の反逆
136
元気でやっている?
一人暮らしは何かと大変でしょう。ちゃんと食べて眠れている? 母はあなたが笑顔なら言うことはありません。ああでも、悪事もしないように。
結局小言ばかりになったけど、私が彼岸から見守っていると伝えたかった。そちらとの境界は案外曖昧だから。この言葉も届くよう祈っています。
―母からの手紙
137
昔、初夏のある日、何もかも放り出して独り列車の旅に出たことがある。中坊の行動力なんて高が知れているが、下車した街で飲んだラムネの冷たさは深く記憶に刻まれた。
学生時代に一日くらい全てを投げ出したって大したことない。今でも時々からりと耳の奥で鳴る涼やかなビー玉の音に、僕は力を貰える。
―初夏の小さな冒険
138
町内会のくじ引きで縺ェ縺が当たったので家に持って帰った。正直縺ェ縺なんて貰っても仕方ないのだが、諢ュ袖荳に置いておくことにする。
しかしこの縺ェ縺、少しずつ蛹悶迚ゥように思える。気のせいだろうか……? まあ、蛹悶迚ゥなら蜍輔↓縺ヲすればいいのだし、莠コ鬟溘を逡蟶クが縺上→ォ縺溘ュ$繧
―縺ェ縺
139
坂道から美しい港町を見下ろした。僕らは
地獄に堕ちる覚悟はいいか新人、と先輩に問われ、意味を図りかねたが、今なら十分に理解できる。
―業火に焼かれるまで
140
物語を読むとき、あなたの頭の中には摩訶不思議な光景が広がることでしょう。それはこの世界のどこにも存在しない。
けれどそれは間違いです。
あなたが何かをイメージすると、無限にある並行宇宙のどこかの銀河系で、その光景は実際にぽん、と生まれているのです。あなたの想像は、創造でもあるのです。
―想像と創造
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