第81話 故郷は<7月1日>

故郷は

遠きにありて思ふもの

そして悲しくうたふもの

        室生犀星


室生犀星は故郷を遠く離れてこのうたをうたったのではない。

故郷が無名の彼を優しく受け止めてくれるほど、寂しさが募ったのだ。

しかし、私は違う意味をもって読む。

私の故郷への思いとして。


両親が亡くなって故郷は遠くなった。

兄弟はいるが、やはり遠い。

両親ほど無償の愛を注いでくれたものはない。

たとえ兄弟といえど、愛は無償ではない。


何か事あるごとに、このうたを思う。

ああ、父母(ちちはは)の愛ほど深きものはない。

存命中は気づかなかった愛。

無くして初めて強く希求する、無償の愛。


私は、我が子に父母と同じ愛を注げるか。

無償の愛を差し出しているか。

自信がない。

我が子は私がいなくなった時、何を感じるだろう。


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