第35話 若菜摘み<3月12日>

毎年、この時期に『若菜摘み』に行く。

芹や蕗の薹、のびる。

鳥の声を聞き、風に吹かれて芹を摘む。

夢中で摘んでいるとあっという間にお昼。


帰って下処理をして、夕方には食卓へ。

適度な田舎が近くにある幸せ。

いつまで行けるか。

友と話しながら、今年も行けた幸せ。


こういう幸せをすっかり手放した人間世界は不幸だ。

季節の巡りにも気付かず、季節の恵みにも預かれない。

つくづく思う、田舎に住みたい。

贅沢な望みだとは承知している。

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