白の女王


叫びを上げる黄昏の深淵が目の前で一閃し、ぐにゃぐにゃとした玉虫色の泡の集簇に抱き竦められた彼を無力感が襲った。

前を走るのは小さな万華鏡のような多面体。激しく泡立つ虚空全体を通じて曖昧な音のパターンが高まり動きを増し、何か言い表しようがなく耐え難いクライマックスを予告していた。

到来しつつあるものが何か、彼には判っているようだった。


H. P. ラヴクラフト

『魔女の家で見た夢』

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