人力誘導式噴進弾⑨

 帝国軍が運用した事実上の巡航ミサイル。開発時の名称は強行偵察用特殊追加加速装置、秘匿名称はV-1。


 実用化された中では世界初のミサイル兵器であり、なおかつその威力おいては戦後しばらく経つまで比肩するものが登場しなかった程の性能を持つ。

 また、世界初の超音速航空機でもある。


 その実態は、ミサイルに航空魔導師を乗せたモノ。というのが最適だろう。

 先に述べたような高い性能も、超音速ミサイルが孕むあらゆる技術的問題を、搭乗する航空魔導師が展開する防御膜と防殻、そして航空魔導師本人による操縦という力業によって解決する事で達成されている。


 しかし戦後の調査によって、本兵器が開発された当初は、有人巡航ミサイルではなく、開発時の名称通り強行偵察用の装備として開発されていた事が判明している。

 そして実際には、極めて脅威的な事に、航空魔導師を戦線のはるか奥深くまで浸透させる投射器材として運用された。

 本兵器は世界初のミサイル兵器でありながら、そのミサイル本体が齎す致命的破壊はあくまで副次的な作用に過ぎないのである。


 その結果は、今日でも驚きをもって見られている通りである。


 モデルはナチス・ドイツが開発したFi-103V-1飛行爆弾の有人型であるFi-103R。

 なおモデル機のエンジンは一基のみであり、また作中機とはコックピット位置に差異があるが、これは用途と求められた性能がモデル機と作中機とでは異なる為、作中での整合性を取るため改変されたと考えられる。


スペック

・全高1.4m

・全幅5.7m

・全長8.0m

・全備重量2250kg

・発動機Argus As 014パルスジェットエンジン(推力350kgf) 1基

・最高速度800km/h(マッハ0.65)

・航続距離330km

・弾頭アマトール炸薬850kg

・乗員1名(練習機型では2名)


 ナチス・ドイツが開発した有人誘導方式巡航ミサイル。

 それまでのジャイロコンパスを用いた慣性誘導方式のFi-103を、パイロットを乗せることによって命中精度を高めるべく開発された。

 なお、本機に搭乗するパイロットは、標的に投入する前に機体から脱出する事とされていたが、射出座席も無しにジェットエンジンの吸気口がすぐ背後にあるコックピットから安全に脱出するのは不可能と考えられている。

 本機は練習機型を含めて175機程が生産されたが、これらが実戦投入される事は無かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る