第3章:銀河布武

ここまでのあらすじ

  

【第1章:天駆ける風雲児】


 今は昔、シグシーマと呼ばれる棒渦巻状銀河では、統治者であるヤヴァルト銀河皇国の権勢が凋落し、個々の宙域を独自に支配する星大名達の台頭によって、群雄割拠の戦国時代を迎えていた。


 そんな中、銀河中央部に比較的近いオ・ワーリ宙域の星大名、ウォーダ家の傍流であるナグヤ=ウォーダ家に生まれた嫡男ノヴァルナ・ダン=ウォーダは、有能な真の姿は表に出さず。わがまま放題の問題児として名を馳せていた。


 ノヴァルナは17歳になったばかりの皇国暦1555年6月、キオ・スー城での氏族会議を奇襲しようとした傭兵達の企みを打ち破ると、同年8月にはその裏を探るべく身分を隠し、同族であるイル・ワークラン=ウォーダ家の勢力圏への潜入を試みる。

 そしてキオ・スー城奇襲を指示していたイル・ワークラン家と、オウ・ルミル宙域星大名ロッガ家の裏取引を寸断に追いやった。


 さらにノヴァルナは同年9月、偶然出逢ったミノネリラ宙域星大名ドゥ・ザン=サイドゥの娘ノアと共に、超空間ネゲントロピーコイルによって1589年のムツルー宙域まで転移する。

 そこでムツルー宙域星大名マーシャル=ダンティスと協力、敵対するアッシナ家を撃破。恋愛関係となったノア姫を連れ、10月の終わりに元の世界へ帰還した。

 だが元の世界では折しもノヴァルナとノアの不在に絡み、ウォーダ家とサイドゥ家、そしてスルガルム/トーミ宙域星大名イマーガラ家が、三つ巴の戦いを繰り広げていた。

 ノヴァルナとノアはこの戦いを収拾させるため、戦場の真ん中で“婚約発表”するという、前代未聞の手段に出たのである。


 この一手により一応は敵対勢力と停戦状態となったウォーダ家だったが、平和は長く続かなかった。ノヴァルナの父ヒディラスが暗殺され、ノヴァルナがナグヤ=ウォーダ家の当主となった途端、オ・ワーリ宙域の内外で敵対する者が動き出したのだ。

 ただノヴァルナは実力を見せ、これらの敵対勢力に悉く勝利すると、さらに年明け早々の1556年2月に、ノア姫の父ドゥ・ザンとも会見する。実際に自分の眼で見て、ノヴァルナという人物の真価に惚れ込んだドゥ・ザンは、正式にノア姫との婚約を認め、ノヴァルナの後ろ盾になる事を確約したのであった。


 これに対しノヴァルナの存在を、将来的な脅威と感じていたイマーガラ家宰相のセッサーラ=タンゲンは、不治の病で余命幾ばくも無い命と引き換えにノヴァルナに罠を仕掛け、殺害を図る。自らの油断から窮地に陥るノヴァルナ。それを救ったのはノヴァルナの後見人セルシュ=ヒ・ラティオである。


 セルシュはタンゲンと相討ちとなって果て、ノヴァルナの心に計り知れない喪失感を与えた。しかしそれでも時代はノヴァルナに停滞を許さない。自身でもそれを理解しているノヴァルナは、やがて再び前を向き、歩き始めたのであった………



  

【第2章:運命の星、掴む者】


 1556年4月。ノヴァルナのもとへ、かつてウォーダ家が仕えていた、前オ・ワーリ宙域星大名シヴァ家の姫、カーネギーが亡命して来た。キオ・スー=ウォーダ家の庇護下にありながら、叛乱を企んだため、命を狙われたのである。

 カーネギーを保護したノヴァルナは、これを機会としてオ・ワーリ宙域の統一に乗り出し、まずキオ・スー家を打倒する。ところがその直後、ノヴァルナ最大の味方であった叔父のヴァルツが不慮の死。さらに後ろ盾となってくれていたドゥ・ザン=サイドゥも、嫡男ギルターツの謀叛に遭い、宙域辺境へ敗走する事態が発生した。


 この窮地にノヴァルナは名目上ではあったが、オ・ワーリ宙域星大名の地位を、カーネギー=シヴァへ返上するという離れ業を演じ、イマーガラ家との停戦に漕ぎつけると、ドゥ・ザン=サイドゥの救援に出陣する。

 しかしドゥ・ザンは惜しくも討ち死に、ノヴァルナは有力な支援者を全て失ってしまう。するとこの機に乗じ、以前より不仲であったノヴァルナの弟カルツェが、反旗を翻して戦いを挑んで来る。

 だがノヴァルナのいとこで、これまで沈黙を守っていたヴァルキス=ウォーダが味方に付いた事により、ノヴァルナはカルツェの謀叛の鎮圧に成功した。


 それから二年後の1558年6月。宙域内の政治がようやく落ち着いてきた事によりノヴァルナは、皇都惑星キヨウへの旅を企図する。銀河皇国中心部の現在の状況を、自分の眼で確かめるためである。

 旅先で次々と現れる敵対勢力を打ち倒したノヴァルナは、星帥皇テルーザ・シスラウェラ=アスルーガと会う。互いを認め合ったノヴァルナとテルーザは友誼を結び、戦乱の世に揺らぐ銀河皇国に、二人で秩序を取り戻す事を誓い合った。


 キヨウから帰還したノヴァルナは11月。イル・ワークラン=ウォーダ家をも撃破して、オ・ワーリ宙域のひとまずの統一を完了した。


 だがその二年後の1560年。星帥皇テルーザと水面下で反目する皇国の有力貴族からの請願により、戦国最大規模の星大名でノヴァルナの宿敵イマーガラ家が、上洛と秩序回復を目指す事を公表。その行き掛けの駄賃として、ウォーダ家を滅亡させようという意図が明らかとなる。

 ノヴァルナは家中でイマーガラ家と結託しようとしていた、カーネギー=シヴァを追放し、さらに弟カルツェを処断。内部の敵対勢力を一掃すると、同年5月19日、圧倒的不利な状況から“フォルクェ=ザマの戦い”でイマーガラ家当主ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち取る事に成功した。


 歴史的な一打逆転を放ったノヴァルナは、翌6月、イェルサスのトクルガル家と同盟を結び、さらなる飛躍の時を迎えたのである………

 

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