第22部:大いなる忠義

#00

 


 ヤヴァルト銀河皇国、星帥皇宮城ゴーショ・ウルム―――


 ヤヴァルト銀河皇国の中枢となる惑星キヨウの南半球、ヘイアラン大陸中央部に位置するゴーショ湾を埋め尽くすように作られた人工島、その島の全体が宮城となっており、直径十キロにも及ぶ巨大な円盤状構造物が、三重に重なった形状をしている。


 この巨大な構造体はほとんどがコンピューターの塊であり、銀河皇国の行政管理のメインコアモジュールとなっていた。これがさらに、惑星キヨウの各所に設けられたサブコンピューターと、巨大な演算ネットワークを形成しており、各宙域首都、星系首都の各惑星へと接続されて、銀河皇国の行政を執り行っているのだ。


 そんなゴーショ・ウルムの高さ千五百メートルの最上部に、星帥皇府がある。


 複数の尖塔を持つ、中世風の王城を思わせる外観ながら、艶やかな金属の星帥皇府の執務室では、二十歳の若き星帥皇テルーザ・シスラウェラ=アスルーガが、新たに側近の座に据えたアーワーガ宙域星大名ナーグ・ヨッグ=ミョルジに不信の目を目を向けていた。


「ミョルジ卿。どういう事か?…報告によると、キヨウの治安がこの二ヵ月、一向に改善されていないと聞くが」


「申し訳ございません。現在、詳細を調査中にてそれが完了次第、即座に対応させて頂きますゆえ、しばらくお待ちを」


 小役人風のナーグ・ヨッグは慇懃な態度で応じるが、その中にもどこか、無礼さを感じさせるものがあった。それに気付いたのかテルーザは、明らかに不満げな表情で問う。


「ひと月前にも、卿から同じような言葉を聞いたが?」


「なにぶん、先年の内紛の混乱に乗じ、周辺宙域からこのキヨウに不法に侵入した者も多くございまして、我等も把握しきれぬ状況にて…」


「キヨウの市民に対し暴行略奪を働いておるのは、そなた達ミョルジの駐留兵だという、話も入って来ておるが?」


「さて?…我が兵達の中に、そのような不届き者がおるとは思えませんが…もしや、兵力不足を補うために雇い入れた、傭兵どもの仕業かもしれませぬな。その辺りも踏まえて調査を進めますゆえ、今しばらく…」


 これもどこまで本当か分からない話である。略奪集団の中には、ミョルジ軍のBSIもいたという報告もあったからだ。


 自分が傀儡である事を思い知らせるようなナーグ・ヨッグの態度に、テルーザは「相分かった」とだけ言い捨て、拳を握り締めた………




▶#01につづく

 

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