11月17日 将棋の日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 本日、2017年11月17日は「将棋の日」である。


 将棋の日は、1975年に日本将棋連盟が制定した一日である。江戸時代、将棋好きの8代将軍徳川吉宗が、この日を「お城将棋の日」とし、年に1回の御前対局を制度化した事が起因している。


 日本が世界に誇るボードゲーム、将棋。世界で浸透しているかと言えば、強くそうだとは言い難いものの、世界で一番の競技人口を誇るチェスに負けない奥深さが将棋にはある。


 チェスやオセロ、そして将棋と言った、ターン制陣取り合戦ゲームは、言ってしまえば最もシンプルな●×ゲームを複雑化させたものである。中でも将棋の面白いところは、相手から奪った駒、この死に駒を、自分の一手として使えることが出来る点にある。これにより、より複雑で奥深い将棋の世界が広がっているわけだ。


 81マスの盤上の世界で、誰が一番将棋の神髄に近づけたかと聞かれたら、多くの人間が天才、羽生善治名人の名を挙げるだろう。将棋界のタイトルを次々と制覇し、名だたる解説人すらをもあっと驚かせる妙手の数々は、今なお語り継がれるところ。驚くべきは、羽生名人はチェスの日本一を獲得した事もあるというところだ。


 ならば、チェスより将棋の方が優れているのかと言われればそうでもなく、それどころか、一説によればチェスも将棋も、起源は古代インドにおいて遊ばれたチャトランガという四人制のさいころ将棋であると言われている。

 このチャトランガが西流してチェスに、東流して中国将棋や日本将棋に姿を変え、

世界各国に広まったと考えられているのだ。


 相手の思考を読む心理戦であり、数手先を読まなければならない頭脳戦。必要とされるは閃きと常に冷静であろうとする、相反した二つの心である。

 一手目から積み上げ、積み上げ、遂には誰もが予測できなかった王手へと詰みあげる。どこか、小説の執筆と似たようなものを感じないだろうか。

 もし、羽生さんが小説を書けば、その世界でも名人と呼ばれる日がくるやもしれない。




 今日は将棋の日。特別な一日である。

 我々は本日を祝福し、過ごさねばならないだろう。

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