11月15日 いい遺言の日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 本日、2017年11月15日は「いい遺言の日」である。


 さて、恐らく諸君らがこの文章を読むころ、恐らく私はこの世にいないだろう。


 それはどうしても避けられなかった、この世の必然と言うものである。どうか、悲しまないで欲しい。


 考えれば、この世に生を受け、随分と生きた。およそ、好き勝手生きてきた人間である。思い残すことがあるとすれば、ロクな親孝行もせずに両親より先に他界し、妹との復縁を為しえなかった事だけである。


 いや、もう一つ。

 もう一つだけ私には心残りがあった。

 それは諸君らとの約束、『今日と言う日に祝福を』全365話を書ききれなかった事である。


 許せとは言わぬ。忘れろとも言わぬ。


 ただ、諸君らがここまで読んでくれたことに私は感謝をしている。それだけを信じて欲しい。

 私の様な、人に迷惑をかけるだけの存在が、確かに認められた気がして、この活字の上でのみ、私は生を感じることが出来た。


 冷やしたぬき、大変おいしゅうございました。














 この時代、遺書を残すとすれば大抵の諸君らが見つかりにくいパソコン上に残す事だろう。

 しかし、気をつけたまえ。

 どれだけ感動的な文章を自分の死後に残しても、パソコンに保存した大人の映像作品を消し忘れては台無しになるのだから。




 今日はいい遺言の日。特別な一日である。

 我々は本日を祝福し、過ごさねばならないだろう。

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