92 砂糖、カラス、足

カラスが一羽、枯れ木の森を飛んでいる。陽の光は薄く、空は靄がかかったように曖昧な色、死んだ木々は鉄格子のようにただそこに立っている。

森の病んだ空気をまるで意に介さず、カラスは羽ばたき、そして少しだけ開けた場所にたどり着いた。

広場には沼と、それに面した小さな家があった。ひどく傾き屋根や壁には蔦が絡みついているが、窓からは薄くオレンジ色の光が溢れでている。カラスは家の中で唯一まともに開く窓に泊まり、曇ったガラスをつつく。内側から開けられると当然のように入っていった。

中は暖炉がパチパチと音を立てていた。カラスは狭い部屋の中を一度ぐるりと回ってから、足でつかんでいた小さな布袋を部屋の主の前に放り出した。

少女は袋の紐を丁寧に解いた。中にはクッキーが3つ入っている。一つを止まり木で休むカラスに差し出したが、羽の手入れで忙しいのか見向きもしない。少女はクッキーを小さく割って口に入れた。かたい生地と砂糖の粒が小さく音を立てた。

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