最後の魔女81 決戦2

雷時雨エレキニードル


ドレイク目掛けて雷の雨が降り注ぐ。常人ならば数発も受ければ、痺れて動けなくなってしまう。

さしものドレイクも無数に注がれる雨を避けることは叶わず、自らの剣で作った超振動フィールドを展開し、防いでいた。


なにあれ、魔法でもないのにあんな真似出来るものなの⋯反則じゃない?


重力グラビティ


動けないだろうから避ける術はないよね。

そのまま⋯⋯え、重力に争ってる?

確か私の発動した重力グラビティは、通常の100倍だったと思うんだけど。このお爺さん本当に人族?


ドレイクは、一瞬のダメージを覚悟で超振動フィールドを解除し、雷時雨ライトニングレインの範囲から縮地で離脱する。

そのまま、無双斬撃を放つ。


刹那のタイミングで放たれた50を超える斬撃が今度はリアを襲う。


流石にこれは石壁とか植物じゃ防ぎ切れない。消耗するけど防御障壁に頼る他ない。


重ね掛けしていた防御障壁が一瞬の内に1枚、また1枚と砕かれる。50の斬撃全てを受け切るのに6枚の防御障壁を消費してしまった。

何とか相手の動きを止めないと、勝ち目はない。


凍結フリージング


雷時雨エレキニードルで濡れた大地を利用し、リアは一瞬で辺り一帯を凍らせる。


予備動作なしの魔法にドレイクは対応出来ず、空間と一緒に凍ってしまった。


やっと、止まったわね。


その隙を狙い、リアはいくつかの魔法を発動させた。


氷の空間に『ピキリ』と小さなヒビが入る。小さなヒビは次第に増えて、やがて大きなヒビとなりて巨大な氷塊は砕かれた。


中から刀身に炎を宿したドレイクが現れる。


《空間断絶》


リアはドレイクが現れる場所を予測していた。故に座標指定魔法を発動させたのだ。


最短距離で私の首を取りにくると思ったわ。


ドレイクの四方を透明な壁が囲う。


「なんじゃ、これは」


必死に斬りかかるもその切っ先は空を舞う。


無駄だよ。いくらお爺さんがマッチョでもその空間断絶は別次元に繋がっているの。決して逃れることが出来ない見えない牢獄。私が解除しない限りは出れないわ。


中々苦労したけど、これで残りは周りの⋯⋯あれ、シュリちゃん相手に中々奮闘してるじゃない。

いや、あれは、動きを封じられてるのか。魔導具の類かな⋯


あっ⋯視界が宙を舞い、反転した。


そのまま、地面へと転がる。


リアの首から血が吹き出し、その背後にいたのは血だらけのドレイクだった。

ドレイクは空間断絶から脱出したのだ。

完全に油断しきっていた隙だらけのリアの背後からその首を跳ねた。


「流石に一瞬だけあの世が見えたわい」


ドレイクは、次元を切り裂いた。

当然そんな技を持ち合わせていた訳ではない。あの空間断絶の中で脱出する為に死に物狂いで会得したのだ。周りから見れば見えない速度でただ剣を振るい続けていただけに過ぎない。脳内に次元を斬り裂くイメージを持ち、何百、何千、何万と剣を振るう。


ドレイクの格言の一つに『この手で斬れぬものは存在しない』と言うものがある。


彼は、今まで形の有る無しに関わらず全てを斬ってきた。

そして、ついに次元まで斬り裂いた。


「次元斬とでも名付けるかの」


全員を戦闘不能にしたシュリがこちらに視線を送る。


「まさかたった一人で倒してしまうとはな。まぁ、元より足止めによる時間稼ぎが目的。お前さんの主人は今し方天に召されたぞ」


その言葉を聞いたシュリは、呆れた感じで足元を指差した。


地面からウニョウニョと這い出てきた蔓がドレイクの足首を雁字搦めにする。そのまま一瞬の内に全身を覆い尽くす。

手に持っていた剣も蔓に奪われてしまった。


「な、何だコイツは! 術者が死んで何故まだ発動するのだ!」


リアの首なし人形・・から伸びた蔓。リアは自身の人形に植物の楽園プラントオブガーデンを発動させていた。


リア自身、空間断絶が破られるとは思っていなかったが、念には念を入れ、凍結状態の時に自身と瓜二つの人形とすり替わっていた。市場で買ってストックしていたケチャップを血糊代わりに添えて。


「その子たちは、血が好みなの。もがけばもがく程に吸われる」


しかし、ドレイクには聞こえない。何とか逃れようともがき、奪われた剣を手探りで探す。

既に周りからは姿が見えない程に植物の根や茎、蔓や蔦で覆われてしまった。

右手首だけが辛うじて外から見える位置で動いていたが、やがて血の気を失ったように赤みが消え、やがて動かなくなった。


ドレイクが息絶えたと同時に対魔消失結界が解除される。結界の媒介となっていたのは、他ならぬドレイク本人だったのだ。


剣王と呼ばれるだけあって、恐ろしい相手だった。

事前に戦っていなければ、命を取られていたのはこっちの方だったかもしれない。

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