最後の魔女
砂鳥 ケイ
最後の魔女(プロローグ)
「お姉ちゃん怖いよぉ⋯」
「しっ! 静かにしてなさい。見つかってしまいます」
眼前には燃え盛る炎、少し離れた先には武器を手にした男たちが姉妹の元に迫っていた。
両親は既に男たちの手にかけられてしまったであろう。
「ヤバいぞ! 思ったよりも火の周りが早い!」
「ここはもう危険だ! 逃げるぞ!」
「だが、情報通りだと、2人の姉妹がいるはずだ」
「逃げられはしないさ。この屋敷の四方は俺たちで固めてるんだ」
「ならば、この炎が解決してくれるだろうさ」
すぐ近くで話していた男たちの足音がどんどんと遠ざかっていく。
助かったの?
ねえ、お姉ちゃん?
あれ、声が出ないや、それに段々と意識が⋯。
(リア、あなたは私たちの分まで生きて⋯)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
!?
ここは⋯
「ああ、またあの時の夢を⋯」
少女は、先程まで見ていた夢の影響だろうか、その眼に薄っすらと涙の流れた痕があった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここは、ザミラ山脈の麓にあるユラム村にある宿屋の一室。
ネグリジェを身に纏った彼女の名前は、シュタリア・レッグナート。見た目10代前半の少女なのだが、実年齢はその何倍も上だった。
そう、彼女はこのガルディナ大陸⋯いや、この世界唯一の魔女なのだ。
約70年程前までは、彼女と同じ魔女は多数存在していた。
しかし、当時の皇帝が降した布告により、その数は激減し、僅か5年足らずでほぼ全ての魔女を討ち取っていった。
後にこれを魔女狩りと呼び、その所業は彼女たち魔女の力を恐れた皇帝陛下が、自らの足元を掬われない為に先手を打ったものだった。
今の私がいるのは、あの時お姉ちゃんが命を賭して護ってくれたからに他ならない。
ベッドから起き上がり、ネグリジェを脱ぎ捨て、何時もの服に着替える。真っ黒なワンピースに先の曲がったトンガリ帽子、右手には先端がクルクルっと巻いている木の杖を持っている。その中央には真っ赤なルビーが自分を誇示しているかのように異彩を放っていた。
まさしく魔女の格好だった。
「お姉ちゃん、今日も行ってきます」
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