第680話関白殿、二月二十一日に(35)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


長押の下に座っていた女房たちからは、

「昇殿を許された内舎人なのでしょうね」

と、皮肉をこめて笑われるけれど、私は、

「これは『わらわせん』とお思いなのでしょうか」

などと、応えます。

中宮様は、

「『むまさゑ』ぐらいかな」

とおっしゃられます。

そのようなやり取りがあったものの、中宮様の御側近くに座って見物できるなど素晴らしく名誉なこと。

このようなことがあったなどと、自分から口に出して言うのは自画自賛のようになります。

それと、中宮様の御ためにと、分別を気にする人で、世間のしきたりに厳しい人が、

「軽々しく、新参者のこのような者を、そこまで御寵愛なさるとは」

と言い、大きなお世話で批判して、この上ない中宮様がお決めになったことにまで、つい自然に批判が及んでは申し訳なくも思うけれど、事実としてあったことを、何も書かないですます方が不自然ではないでしょうか。

確かに、他人から批判されるような、過分の御寵愛があったかもしれませんけれど。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :なかなか嫉妬の世界ですね。

清少納言先生:しきたりにうるさい人もいましてね。

舞夢    :それでも、中宮様からの御指示で動いたのに。

清少納言先生:したり顔の古参の人は、なんでも口に出します。


※関白殿、二月二十一日に(36)に続く。


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