第663話関白殿、二月二十一日に(18)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


中宮様のお乗りになられた御輿は、とっくに宮に到着なされておりました。

すでに、お部屋の準備も整えられていて、座っておられました。

中宮様は、

「ここに、清少納言を呼びなさい」

との仰せ、右京や小左近などの若い女房が、

「清少納言様は、どちらにいらっしゃいますか?どちらにいらっしゃいますか?」

などと、私(清少納言)の乗った車の到着を待って、気を配るのですが、私はいません。

到着した車から、降りる順番に、女房達は四人ずつ、中宮様の御側に参上し、集まるのですが、中宮様は、

「これはおかしい、清少納言は来ないの?何か理由があるの?」

と仰せになるのですが、私たちは、その様子を知りません。

結局、一番最後に下車しているのを、やっと右京や小左近に発見され、

「あれほど中宮様が心配になられているのに、何故これほど遅いのですか」

などと言って、私を中宮様の御前に連れて行くのです。

中宮様は、今日退下されたとは思えないくらいに、長年住み慣れた御住まいのような雰囲気で、落ちついていらっしゃるのが、興を誘われます。


※関白殿、二月二十一日に(19)に続く。

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