第661話関白殿、二月二十一日に(16)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


中宮様が内裏から二条の宮にご退出なされた夜のことです。

女房達は車の順序など無視して、「私が、私が」と大騒ぎになり乗り込もうとするのが不愉快なのです。

実に、このひどいまでの騒々しさ、賀茂の祭り見物の帰りの時のような雰囲気、女房達の周囲への無神経さは、とても恥ずかしくて見ていられるものではありません。

私(清少納言先生)は、気持ちが通じている女房と一緒にいて、乗り込もうとはしません。

「あんなふうに大騒ぎで乗り込まなくても大丈夫と思います」

「私たちが、あんな人が多すぎる車に乗り込むことができなくて、中宮様の御前に参上できなければ、それは中宮様のお耳に自然と入ります」

「そうなれば、中宮様は御車を寄越されると思うのです」

などと、話をしていると、まだ後ろから女房達が一団となって出て来て、私たちの前を通り過ぎ、車に乗り込んでしまいました。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :すごい女性のパワーですね。

清少納言先生:品がないといえば、そうなります。自分優先なのです、女房達は。

舞夢    :先生としては、付き合いきれないと?

清少納言先生:ちょっと、同じ仲間には入りたくないなあとね。


※清少納言の性格からすれば、混雑が予想される車に、相争ってまで乗り込むなど、無粋の極みなのだと思う。

あんな恥ずかしい女房達と、一緒にはなりたくないという気持ち。

本当にわかりやすいものがある。


※関白殿、二月二十一日に(17)に続く。

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