第659話関白殿、二月二十一日に(14)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


中宮様は、

「そういう話であったのに、この清少納言は春の風の仕業とするのです」

とおっしゃられ、うれしそうに笑われる姿が、とても素晴らしいのです。

関白殿は、

「春の風にいわれのない事実をかぶせているのだよ、この時期は山田を耕作する季節になっているだろうに」

などと、古い歌を口ずさむ様子が、本当に優雅で魅力にあふれています。

関白殿は、

「それにしても、誠に残念なことに、全てを気づかれてしまったね、指示をした者たちには、本当に神経を使って作業するようにと言ってあったのに」

「中宮様のお近くには、こんな見張りをする人がいるんだなあ」

とおっしゃられ、

「『春の風』とは、まさにそのものの歌を思い出して言ったものだ」

ともおっしゃられ、今一度その歌を詠んでおられます。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :山田を耕作の古歌とは?

清少納言先生:貫之の「山田さへ 今は作るを 散る花の かごとに風は 負はせざらなむ」、つまり、「山の田は今は耕す時期なのです、桜が散るのは風のせいではなくて、時期のせいなのです」そんな感じかな。

舞夢    :それにしても関白道隆殿も、なかなか風情を解するお方ですね。

清少納言先生:はい、その通り、さすがです。


関白殿、二月二十一日に(15)に続く。




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