第226話宮の五節出でさせ給ふに(4)

そんな二人の様子を、中宮職の女官たちは不安になって聞き耳を立てていたのですが、どうにも返事に時間がかかりそうなので、待ってはいられません。

別の角から帳の中に入って女房のところに近寄ります。

宮司

「ねえ、どうして歌のお返しをすぐに差し上げないの?」

と、他の人に聞かれないように小声で言っています。

私の位置は、小兵衛の君との間に四人の距離。

これでは、上手な返歌を思いついたとしても、教えづらいのです。

実方様は並外れた歌の名手ということに萎縮してしまい、ありきたりの返歌では恥ずかしいなどと遠慮しているということだろうけれど、好ましくありません。

歌を詠む人であれば、そういう遠慮をしてはいけないのです。

それほど素晴らしく詠めなくても、こういう時は即座に詠んでお返しするべきなのです。



宮の五節出ださせ給ふに(5)に続く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る