第6話 朝昼夜の承
起。
俺の名前は、光リエ(ヒカル・リエ)。女の名前だが、れっきとした男である。
「女の子が欲しかった!? 男の子が生まれたら、男の子の名前をつけやがれ! 小さい頃から、「リエちゃん? え!? 女の子と思った!」とか、好きな女の子に告白をしては、「私、女の子の名前の人とは付き合えません!」とか、そんなことばかりだ!? 俺の人生で楽しいことなんて、やって来ないんだ!」
と、思いつめ、学校の屋上から飛び降り自殺を図ったのだが、不幸な俺は死ぬことすら許されなかった。そんな俺の前に、レンタル福の神という、偉そうなでキチガイな女が現れ、不幸を幸福に変えるという。俺は、福の神に憑りつかれてしまった。
承。
「貴様の学校は、いったいどうなっているんだ?」
福の神の女は、俺に憑りつき学校にも一緒にやって来ている。福の神の姿は、俺以外の人間には見えていないようだった。授業中の福の神は退屈そうだった。
「何が?」
「堕天使、妖精、小人、犬人間・・・貧乏神までいるんだけど。」
「そうなのか? 俺には何にも見えないんだけど・・・。」
「このクラスが、この学校事態が依り代になっている気がする。」
「依り代? 神や精霊が宿る場所というやつか?」
「そうだ。何が起こるか分からないから、できるだけ刺激しないように関わるなよ。不幸なオカマ。」
「誰が不幸なオカマだ!」
小声でしゃべっていたが、思わず大きな声が出てしまった。
転。
「光くん、授業中は静かにしなさい。」
「すいません。」
「キャハハハハ。」
俺は、福の神のせいで、先生に怒られ、クラスメートに笑われた。
「福の神、おまえのせいで怒られたじゃないか。」
「何を言っている? 貴様は、私に感謝すべきだ。」
「感謝だと!? ふざけるな!」
「前の黒板を見てみろ。」
俺は黒板を見た。そこには難しそうな問題が書いてあった。
「な、なんて難しい問題なんだ!?」
「だろ? 貴様に1+1が解けるか?」
「む、無理だ・・・。」
「私は福の神として、貴様が先生に当てられて、難しい問題を解けなくて、恥をかかないように、不幸から守っているのだ! ハハハ!」
「はは~、福の神様。ありがたや、ありがたや。」
「だから手を合わせて拝むなと言っている。」
「つい・・・。」
「貴様の不幸は、私が頂いてやる。安心するがよい。」
「ありがとうございます。福の神様。」
「ちょっとトイレに行って来る。」
福の神なのに、トイレには行きたいらしい。
結。
「光くん、次の問題を解いて。」
「え!? 俺ですか?」
俺の前に、1+1よりも難しい、2+2が現れた。
「助けてくれ! 福の神・・・。」
福の神の女はトイレに行っていて、いないのだった。
「・・・わかりません。」
「高校生にもなって、こんな問題も分からないのですか? 小学生からやり直しなさい。」
「キャハハハハ。」
俺は、やっぱり不幸の似合う男のようだ。先生にバカにされ、クラスメートに笑われて・・・。昔の俺なら、死んでしまいたい、と思っていただろう。
「ただいま。」
「おかえり。」
「なんだ、なんだ!? 笑顔で迎えられると、気持ち悪いな。何か不幸なことでもあったか?」
「何にもなかったよ。」
「そうか、それは良かった。」
俺の不幸は、彼女の笑顔を見たら吹き飛んだ。
つづく。
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