2、Get Off of My Cloud/ザ・ローリング・ストーンズ
ピンクレディーという大現象が巻き起こり、松田聖子や中森明菜といった超アイドルが出現してた。
が、そっち方面にはまるきり興味が向かなかった。
仲間たちが「ザ・ベストテン」を面白がれる意味がわからなかった。
いつしか、歌手のことを「アーティスト」と呼ぶようにもなってた。
が、サザンオールスターズは面白いけどそれだけで、TMネットワークはチープで寒々しく、ドリームズカムトゥルーは上手だけど大げさすぎて、肌に合わない。
さだまさしの歌だけはメロディに言葉がうまく乗ってるのが理解できて、落語的な語感がしみじみいいなあ、とはこっそり思ってた。
けど、オレの脳の構造上、日本の歌手の歌声にはほとんど魅力を感じることができなかった。
ついでに言うけど、バーのオカマママが、「ひとって若い頃、必ず三つのうちのどれかの道を通ってくるじゃない。つまり、松任谷由実か、中島みゆきか、竹内まりやか、のね・・・あなた、誰派だった?」と言ってたけど、そん中の誰もちゃんと聴いたことねーわ、わりーけど。
というわけで、オレは無所属のまま、音楽の荒野を流浪してたんだった。
ある日、弟とふたりで、小学校からの帰り道をゲラゲラ笑い合いながら歩いてた。
そこに、それは落ちてた。
その頃は、なんでも落ちてる時代だった。
電気製品や家具から、エロ本まで、欲しいものはなんでも道端にあった。
そこに、一本のカセットテープが落ちてたのだ。
オレたち兄弟は面白半分に持ち帰り、わが家愛用の、昭和のスパイ物に出てくるような古めかしいカセットデッキに投入した。
飛び出してきた音声は、不思議なリズムと、聞き覚えのない言語、つまり英語の歌詞だった。
のちに知ることとなるが、それは「アース・ウインド・アンド・ファイアー」や「ABBA」なんてガイジンさんの歌が満載された、何者かのマイベスト、みたいなやつだった。
はじめて聴くタイプの音楽性に、オレたちは度肝を抜かれる・・・というよりは、キョトンとするしかなかった。
そんなわけで、大半を聞き流したんだが、中でオレの耳を引く曲があった。
それが、チャーリーのキャッチーなドラムと、ミックのシャウト声だ。
「ゲット・オフ・オブ・マイ・クラウド」でシビレさせられ、オレはロックに目覚めようとしてたんだった。
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